都内在住40代独身女性ならではの、オタ活&仕事のストレス&アンチエイジングのことなど

はぐは修ちゃん選んで正解!~「ハチミツとクローバー」を15年振りに読み返した美大出身者のネタバレ感想

「ハチミツとクローバー」は、単行本1巻が本屋に並んだ時に見かけて知り、販促用の試し読みをチェックして買ったのが出会いの最初だった、と思います。

さすがに昔過ぎて記憶が曖昧…

美大の話だったし、マンガ好きだし、絵が可愛かったし、面白かったので、そのままずーっと新刊が出る度に買っていて、終わる頃には年齢だけはすっかり大人になっていました。

何度も何度も読み返し、単行本がボロボロになったので手放し…で15年経っていましたが、今回は楽天KOBOで30%オフで買えたので大人買い!


ハチミツとクローバー 1【電子書籍】[ 羽海野チカ ]

モデルは武蔵美と言われていますが、多摩美っ子としては

「あー、武蔵美ってこんなリア充生活送ってた人いそうー」

という、卑下した気持ちになりますね…

今の状況は分からないけど、当時の武蔵美は学科の足切りが一次試験であるから、偏差値55くらい無いとそこで落ちる。

実技試験も短時間で仕上げる効率と実力が見られる。

学校は駅から遠いけど国分寺近くだから街に出やすい。

それに引き換え多摩美は八王子の更に山にあって坂が多く、学科の足切りは無いし、実技は武蔵美の倍の時間かけてアイデアと実力をチェックされる。

自分勝手だけど繊細な社会不適合者が多くて、リア充と根暗がパッキリと分かれていた印象です。

が、OBの先輩と話した時に

「ハチクロって僕の学生時代そのまま!」

と言っていて、

「え?同じ学校の同じ学科卒業なのに、何故??」

となりました…

これを元クラスメイトに話しても

「マジで…?あれファンタジーじゃないの??」

と言っていましたが、まぁ特にウチのクラスは本当に社会不適合者が多かったんじゃないかなぁ。

また、そもそもサークルも入っていず、予備校時代の繋がりも無いのに、他の学科の学生とあんなに仲良くなる、ということがありませんでした。

アレはボロアパートに住んでる男子達の仲の良さプラス、花本先生(修ちゃん)の存在がデカい!

あんな風に大学内の自室に学生を招いてお茶飲む先生なんて、いませんでしたもん。

偶にああいう研究室を持っている先生が出てくる設定の大学を創作物で見かけるけど、ウチの学校はそういうの無かったなぁ。

ただファインアート系の学科なら、ああいう仲の良さもあったりしたのかなぁ。

30代前半までは大学時代の友人達とマメに会っていましたが、私は今は1人も連絡を取っていません。

それまで集まる時も、同じクラスだった女子だけで集まってました。

皆んなそんなに学生時代に楽しかった思い出も無く、というかネガティブな思い出がたくさんあって、あまり学生時代の話をした記憶もありません。

オシャレでサバサバしたリア充系は眩しく、根暗で自分の意見をハッキリ口にしないマイペース系は他の繋がりで出会った人たちと繋がり続けていた、かな?

それでも私はどっちの輪にもそこまで入り込めないまま、自分から連絡して元クラスメイト複数人と定期的に飲み会をしたりしていたんですが、それも途絶えた…という感じです。

切れた理由はそれぞれ違うけど、でも最後に残った2人とはコロナ禍で途絶えました。

アベノマスク批判していた友人と縁を切って良かったと再認識

何度かコロナ禍に学生時代の友人2人と疎遠になったことを書いていましたが、内心ずっと引っかかっていました。「アベノマスクを燃やしたい」「与党が憎い」「小池百合子に投票した都民は何を考えてるんだ」と2人が意気投合していた時、私個人は特別に支持政党は無いけど、過激に悪意を見せる個人は怖いと思っていました。話を聞く限りは、とにかくマジョリティが嫌いなんだな、という印象しか受けなかったんです。そして、そういう...




さて、一言でまとめれば「美大生たちのオシャレで可愛い、けど切ない片思いマンガ」という印象のハチクロは、「登場人物たちが皆んな性格良くて仲良し過ぎる」という捻くれた私の嫉妬心を煽ってくれますが、要所要所に血を吐きそうなリアルな心の闇も描いていて、本当に何度読んでも面白いですね。

最近くらもちふさこ「花に染む」を読み返して、「何で単行本発売追ってた時も、以降読み返した何年間も、この作品全体に散りばめられた一貫したテーマの良さに気付けなかったの⁉︎」と愕然としましたが、ハチクロもそうでした。

圓城陽大(くらもちふさこ「駅から5分」「花に染む」)再考察ネタバレ感想

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これ歳を取って考え方が変わったせいなのかなぁとか思ってたんですが、まぁそれもあるだろうけど

「単行本の発売を追っている時には、自分の中に既に思い込みや先入観が出来てしまっていて、その枠から外れて読めない」

というのもある気がします。

その後何度も読み返したりしていても、まだ消化しきれていない段階だと思い込みの方が強くて、そこから一旦離れて読み返して気付くことがある、のかもしれません。

ま、私の読解力の問題もありますが。

今回読み返して強く思ったのは

「あぁ、美大って『自分は何者なのか』を考える時間を与えられた存在だったなぁ」

ということです。

大学受験の時からそれは始まっていて

「自分は何が好きなのか?」
「自分は何が出来るのか?」
「得意なものは何で、苦手なものは何か?」

を、「アウトプットして表現する」という枠の中で考えていきます。


インプットしないとアウトプットは出来ないので、この期間に色んな物を見聞きして考える。

私は受験生時代から

「何故か評価されるアイデアもあるけど、根本的に足りない技術があって、平均値を上げないとダメだな」

と自己分析していました。

頑張ったはずの絵はC評価なのに、何となく描いてみたものがA評価だったりして、困惑したなぁ。

学生時代もやっつけで徹夜で描いた課題持って遅刻して講評に出したら、即先生に高評価の位置に取り上げられて「何でこれが?」となったり…

で、それをクラスメイトから「すごいじゃん」とか言われても、自分は納得していないから嬉しくないというか、どう捉えて良いか分からないんですよ。

それよりも、描いている時に集中し過ぎて脳内麻薬が出たり、自分が好きだなぁと思う色合いで描けたりした作品の方が認めてもらいたい、けど、上手くいかない…

今でも手元に残している「自分も気に入ってるし、評価もされた作品」は2点しかありません。

その後就活が始まり、私は偶々1番行きたかった事務所に教授のコネを使って入りました。(でも仕事の出来や人間関係で色々あって短期間で辞めてますが…)

恋愛は…ずっと片想いしていたクラスの男子に弄ばれ、鬱になってガリガリに痩せたりして、相談していた友達に見捨てられたりして、なんか大変だったな…

未だに人から「自分のことしか考えていない」と言われる私ですが、そりゃそうだろ、と途中で開き直りましたね。

だって「自分のことを考える」のが私の学生時代の勉強だったんだから。

もちろんその先に「その上でアウトプットした物を世間に認めさせる」というのが必要なんですが、ここをクリアするのが難しい!


今思い返してみると、竹本くんのように失踪した人はいませんでしたが、迷走して病んだり、休学したり、方向転換する人たちはいましたねぇ。

そのうちの1人は手塚治虫文化賞を獲ったので、要領良く生きれば正解ってもんでも無いな、と最近思いました。

私はグラフィックデザイン学科だったけど、クラスメイトで30代になってもデザインを続けている人はそんなに多くありません。

特に女子だと、結婚とか出産で「仕事」としてデザインに関わる人はいなくなっていきますね。

衣類とかモノづくり系を趣味にしたり、仕事にしている子もいます。

ただ、ハチクロのメンバーのように学生時代に培ったものをそのまま続ける、というのはとてもとても希少価値の高い存在。

OGでものすごく有名な絵本作家が先輩の同級生ですが、そういう人もいるにはいるけど、稀。

ましてや、はぐちゃんのように立体も平面もなんでも興味を持ったものを作ってみたい、という子が生き抜いていくことは、現実的にはかなり厳しいと思います。

絵を描くことを続けるだけなら、出来るんです。

男子でも30歳過ぎてまだフリーターってのもいたし。

ただ画材などを買うお金も稼げる人、となるとなかなか難しい。

特にはぐちゃんは人見知りさんですしね。

そういう彼女が

「最低限生活費を稼ぐためには賞をたくさん獲らないといけないから、賞を獲りやすい路線のものを描かないといけないのかと葛藤する」
「修ちゃんに側で支えてもらわないと、たくさんあるやりたいことの数をこなしていけない。でもそれは大好きな修ちゃんの人生を奪うことになる」


と悩んだあたりのエピソードは、以前の私はその後の展開の目まぐるしさであまり注視出来ていませんでした。

だから最後にはぐが修ちゃんを選んだ時には「え!?」となったし、父親目線だった修ちゃんが女としてはぐちゃんを見始めた瞬間がどこか分からず、ラストはビックリしたものです…

まぁ「一緒にそれぞれ好きな作品を創り続けていく同士でありライバルにもなる森田さん」への好きと、「自分を支えてくれる優しい居心地の良い安心できる修ちゃん」なら、修ちゃんを選ぶのは今となっては納得かなぁ。

森田さんもラストで自分で自覚していますが、自分が兄と復讐をやり終えたことにより、もうそういう何かに囚われたりしがみついたりしなくて良い状態に呆然としつつ、そこにはぐちゃんを引き入れようとしてしまったのがね…

もちろん「無理しなくて良い、生きていてくれれば良い」という森田さんの言葉は最高に優しいものなんだけど、はぐちゃんは「一緒に頑張ろう」って言ってくれる人が欲しかったから。

これは究極の選択でありながらも、そのどちらの選択肢も持っていることが羨ましい!とも思います。

私はほら…自分一人で自分の生活費を稼いで生きていくだけで精一杯、という状態のまま中年になっちゃったから…
でも修ちゃんも別にはぐちゃんの犠牲になっているわけじゃなく、むしろ彼は失った親友の原田さんと、それで傷付いているリカちゃんを支えようとして共倒れしかけた心の傷がずっとあって、その穴を埋めてくれる存在がはぐちゃんだったから、ピースとしてはキレイにハマっているんだな、と改めて思いました。

一時はリカちゃんを楽にしてやるために、屋上から突き落とそうとまでしてしまうくらい追い詰められていましたしね…

それがはぐちゃんとの恋愛という形になるとは思わなかったけど…

「3月のライオン」でもはぐちゃんは「修ちゃんの彼女」という立場で名前が出ていたけど、あの2人がアレコレする姿が思い浮かばないわぁ。

ただ、結局どのキャラクターも皆んな色々考えていることや悩みやあるけど、とても恵まれた人達のお話ですね。

そして、はぐちゃんを好きになって、自分が何をしたいか見つけられた竹本くんの成長物語、がメインの軸ではあった!

結局、竹本くんの中にずっとあった心許なさというのは「早逝した父」だった。

大好きだった優しいお父さんがいなくなって、その後お母さんが再婚して、

「お母さんの為に頑張ろう」

という目標が無くなってから、竹本くんは心の中に空洞を抱えながら手を動かしている学生時代だったんだなぁ、と思うと、若い頃よりもずっと心にズシンと来ました。

ありえないけど笑える面白いエピソードもあれば、切ない少女漫画らしいエピソードもあれば、「生きるってどういうこと?」という人生のテーマも詰まっていて、やっぱり名作だなぁと改めて思います。

ものすごく理想的な世界すぎるな、という部分はあるんですけどね。

だって皆んな本当に、周囲の人たちに目を配っていて、優しくて、思い遣り合っていて…あんな風には何歳になってもなかなか考えられないよ。

ちなみに私は野宮さんが好きですが、森田さんも好きです。

あゆの片思いをずっとそっと森田さんは見守っていて、時々すごく良いことを言って励ましてあげているんだもの。

あゆと森田さんという恋愛路線もあっただろうに、そこに持っていかなかったところも「友情の大切さ」みたいに感じます。

もう連載当初からあゆの失恋は確定していて、それでも真山なりにあゆを大切に思っていて…なんてのも理想的よね~。

後日談ではあゆと野宮は結婚、真山とリカ、修ちゃんとはぐはお付き合い、という関係性でしたが、この女性3人が仲良く山で創作活動するのを男性陣が見守って支えている、というところが、女性としては本当に理想的な夢のお話だと思います。

自分が必要だと思う相手から、自分も必要とされたい。

これはもう鉄板の少女漫画のテーマですからね。

裏方で女性が内助の功になるのではなく、対等に自立しながら寄り添い合う。

で、男性にとっても理想的な関係性ですよね、きっと。

自分は自分で好きな仕事や趣味に打ち込めて、お金も余裕あって、奥さんや彼女が大好きで…

だって皆んな才能あって優しいんだものっ!

このマンガは若い時に読んで共感出来る部分と、大人を越えてから共感したり客観視出来る部分が変わってくる気がします。

リアル過ぎないからこそ、ホッとしながら読めたり、笑えたり、泣ける。

はぐちゃんがケガをしたこと、誰も責任追求しない、というところもこの世界観だなぁと思います。

実際こんなことがあってネットニュースに載ったら、今の時代は「大学の不手際」とか批判が起きそうだもの。

はぐちゃんが妬まれるシーンは前半などもありましたが、でも悪意がある人から守ってくれる人がいたら、人はまだ生きていける。

そういう人に出会うために頑張るとか、自身がそういう人になろうとするとか、若い子も読んで考えたり出来るマンガなんでしょうね。

ちょっと私は、若い時そこまで考えられなかったけど…

でも修ちゃんも言ってたけど「大人は何でも出来るわけじゃない」は、つくづく思います。

「老害」とかすぐ言うけどさー、若い子だって良い子とダメな子って他人からの評価分かれるからね?

「世の中のこともう分っちゃってるんでー」って思い込んでて斜め上の解釈して間違えたり手抜きして、でも開き直る子もいれば、臨機応変にすぐ対応して感じ良い出来る子もいる。

それは中高年も同じ。

年齢じゃなく、「人それぞれ」だから。

このマンガはそういう「普通を押し付けない」という部分も、愛され続けて古くならないところでしょう。

今回は、同級生で唯一「きっとハチクロみたいな生活もしてただろうな」と思えた男子のお通夜でもらった毛布に包まりながら、ハチクロを読み返しました。

学生時代は交流無かったけど、その後友達繋がりで連絡取っていて、でも一緒に会ってた子がメンヘラ女だから気を付けろ、と他の友人から言われて距離置いてたタイミングで亡くなってしまった同級生でした。

そのお通夜でいかに元美大生たちが非常識だったか、は書いています…

独身が持っていないモノ、それは喪服と葬儀のマナー

それは…冠婚葬祭グッズ。昨年急に知人が亡くなり、日が悪いということでお通夜は3日後との連絡が入りました。独身仲間と「喪服持ってる?」「数珠は?」「バッグと靴は?」と連絡を取るも、みんな持ってない。(同級生なのでみんなアラフォー)(しかもみんな常識の無い元美大生。)唯一一式持ってる子は、数年前に祖母が亡くなり急遽7万円でデパートで揃えた子のみ。会社のお姉様に聞いたところ、「ネットで買えば安いし、Amazon...



「良い人って早くに亡くなるって言われてるの、本当なんだねぇ」

と友達と言い合ったなぁ。

そういう別れも時々訪れる歳になり、あぁ学生時代って嫌なことばかりすぐ思い出すけど、良いこともあった気がするなぁ、なんてぼんやりしています。

またゆっくり読み返そうと思いますが、久々に皆様も手にとってみてはいかがでしょうか?
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