雁須磨子「ややこしい蜜柑たち」1巻ネタバレ感想~恋愛か友情か?な女友達2人と寝取られ男の三角関係

2022年09月12日
マンガ 0

PR
雁須磨子のマンガは新刊が出ているのに気付いたら買っています。

で、定期的に好きな作家の新刊チェックをしていて見つけた「ややこしい蜜柑たち」も、買ってすぐ読みました。


ややこしい蜜柑たち 1 (フィールコミックス Fcswing) コミック – 2022/9/8

最近はBLよりも、女性が日常ちょっと引っ掛かる微妙な心の悩み、とかメンタルの揺れを、ユーモア交えて描いていることが多いですね。

絵がすごく上手いわけではない、というかザックリした絵なのに、ゆるふわとした可愛さやシャープさがあって、言葉選びやキャラの心境変化のテンポが独特なため、「ネームがすごく上手い漫画家さん」と思っています。

確か先に菅野彰のエッセイにハマって、彼女が友人として何度か雁須磨子のことを書いていたため、それで存在を知って読み始めた気がしますが、すごく好きなんだけど良さを一言では表せない!

いつもニコニコしてふわふわしているけど観察がある女性、とか、キレイ系で性格キツそうなのにネガティブ思考の女性とかが多くて、と書くと無難な設定に聞こえてしまうけど、そういうキャラたちがどこか抜けていたり、引っかかったり、笑ったり悩んだりするポイントが独特。

絵がざっくりしているので、生々しい性的な話や描写も読みやすい、かな。

という彼女の良さが前作の「あした死ぬには、」でまた変化していて、アラフォー女性の仕事や恋や加齢の悩みがギュッと詰まっていて良かったし、評価されていました。

【無料】リアルな40代女性の悩みを描く雁須磨子「あした死ぬには、」

大好きな漫画家、雁須磨子さんの新作「あした死ぬには、」。こちらウェブ連載で、現時点で3話まで公開されています。(但し1話と最新話のみ無料、前話は次話更新日正午で公開終了)私は気付くのが遅く、2話は読み逃してしまいました…内容紹介文はこちら。20代ほどがむしゃらじゃない、30代ほどノリノリじゃない。40代で直面する、心と身体の変わり目。突然の病気、更年期障害、取れない疲労、美容の悩み、お金の不安、これからの人...



今度の新刊は、若い男女のお話。

あとがきを読むと、連載時には「タンゴール」というタイトルを仮でずっと使っていて、悩んで、悩んで、1巻発売のタイミングまで引き伸ばしてやっと編集さんと相談しまくった上で「ややこしい蜜柑たち」という名前に決めたそうです。

その経緯の緩さと拘りが、また雁須磨子って感じ。

元々登場人物たちの名前が蜜柑の品種のため、それを出しつつ可愛さもあり、内容も伝わるタイトルに…と試行錯誤されたそうですが、いやー、本当に「ややこしい恋愛ストーリー」です。

主人公はキツイ系美女だけど性格は地味で暗めの浜里清見(愛称キヨ。最初はデザイン事務所でバイト中)。

同棲中の彼氏がいるけど初夏には内緒にしていて、しかも彼氏が浮気中なのに気付いてはいるけどあまり気にしていない様子。

高校時代からの友人の瀬戸初夏(ういか)は、陽キャで可愛い男女に人気ある天然系(最初は飲食店でバイト中のフリーター)。

で、初夏が新しい彼氏である歳下イケメンだけど根暗な白柳結(愛称シロ。最初は大学3年生でインダストリアルデザインを専攻していて、初夏のバイト先で高校時代から働いていて知り合った)を引き合わせるところから話は始まります。

初夏はキヨとシロの2人で見に行くよう美術展のチケットを渡し、その後2人は初夏の話で意気投合。

流れでキヨが初夏の彼氏であるシロと寝てしまい、それを初夏に言ってしまった時に

「キヨってもしかして私のこと好きなの?」

と言われてキスされ、キヨは混乱。


初夏と連絡が取れなくなって精神的にボロボロになったキヨはシロの元を訪れますが、シロはキヨと初夏の関係性の異様さ、惹かれるけど怖さを感じるキヨに振り回されて…

それから5年後、美形だけど女性に不信感を持つ社会人になったシロが、楽しみにしていた仕事で偶然キヨと再会する、というところまでが1巻に収録されています。

ちなみに初夏は2人と連絡を取らなくなった後は、沖縄に失恋旅行中という楽しそうな写真をインスタに投稿していて、5年後の時点ではアパレル経営で成功してテレビ出演もしていました。


とにかく現時点では、「初夏は魔性の女」という印象。

キヨもシロも初夏のことが好きなんだけど、初夏はレスが早くて行動力あって積極的に見えて、スッと引いたり冷静に観察して試してきたり…

キヨの好意も気付いていて、無邪気に接しながら

「キヨとシロの好きなところは『一緒にいてもむちゃくちゃつまんない』。だから2人は気が合うと思う」

と別れ際にキヨに言いつつ、失恋旅行?中知り合った相手には

「ずっと私のこと好き好きって態度だったのに、いざ構ってやったら『は?』って感じで」

なんて言うので、本当に思考回路が意味分からない!

初夏を失ってボロボロの状態でシロの前に現れたキヨはストーカーのような怖さもあり、依存してきているのかと思いきやシロが再度手を出そうとしたら全力で拒否という…

そんな変な2人の女に巻き込まれつつ、キヨが気になるシロ。

でも、最初はブロックしたけどやはり気になってしまってキヨの家に行ったら、既に引っ越し済み。

なんかこう、理屈じゃ分からないけど惹かれてしまう男女たち、と言えば良いのかもしれませんが、自身や他者の気持ちを「キモい」「怖い」と思ったり、でもそれは違うのか分からなくなったり…という、その「普通の線引きが分からない」という感覚が良いなと思いました。

そうそう、物語やSNS上ならともかく、実際にリアルに自分が他者と接している時、

「キモい、怖い、と思われたくない」

というのは大前提として思うはずなのに、それが客観視出来なくなるのは、分かる!

思わず衝動的に動いてしまい、それで引かれることもある。

けど、それにしてはかなり極端な設定ではありますね。
PR
もっと話が進まないとどういう展開になるかは分かりませんが、美男美女で根暗で、自分とは違う明るい初夏に惹かれる美術系のキヨとシロ、というのは、そりゃ気が合いそうだなとおもいます。

でも自分と似ているから恋愛になるってわけでもないしね…

シロ自身は、「自分ばかりが初夏のことを好きみたいになっていて苦しい」という気持ちをキヨに話し、それに共感する美女のキヨに惹かれてもいくのですが、これもまた分かると言えば分かる。

でもキヨの初夏への執着心に異様さを感じ、エイリアンに見えて怖いと思うのも分かる。

キヨ自身はそんなに自覚は無かったけれど、好きな初夏の彼氏だから興味を持ち、今までの歴代彼氏はタイプじゃなかったから手を出さなかったけれど、シロは美形で好みな部分もあったので手を出したのも、分かる。

結局キッカケ自体は「初夏の振り回されて苦しい」という共通点だったりもするから、そのキッカケをサラリと作った上にすぐに立ち直れる初夏のことがよく分かりません。

しかもキヨにキスしているし…

キヨの職場の先輩が、相談に乗りつつ「フレネミー?なんなの私が理解できないのはジェネレーションギャップ?」と混乱しながら相談に乗っていましたが、傍から聞いていたら本当に謎な三人ですね。

うーん…現時点では、キヨはプラトニックな気持ちでは恋愛対象として初夏のことが好き、なように思えますが…

で、初夏は「自分のことを好きな人が好き」なのかな?

その手の魔性の女キャラは、雁須磨子のマンガに時々出てきます。

「本当に自分のことを好きなのか分からない」と相手に思わせてしまうのに、優しい天然キャラって人。

「つなぐと星座になるように」もそんなところはあったかな。


つなぐと星座になるように(1)

BL系の方がもっとシンプルで、イケメンで執着心が強いタチと、気弱だけど可愛げのあるネコ、みたいなテンプレな部分があるんだけど…

基本的にはハッピーエンドというか、フワリと納得の行くラストに落ち着かせる漫画家さんの印象があるので、今後の展開に期待しています。

あんまり長編で描く人でもないから、数巻で終わるのかな?

ただ再会してキヨとシロが戸惑っているところに、初夏もまた現れて〜という流れになりそうだなとは思うけど、どうなんでしょうか。

単にノリで百合なシーンを入れるってタイプじゃないと思うんだけど。

傍から見ていたら、なんだかんだと一緒にいて楽しい、楽と思える似た者同士のキヨとシロは確かにお似合いだし、根暗だけど自分への好意はひしひしと伝わる相手は男女関係なく好き、と思う初夏が

「この2人を近づけたらどうなるかな〜」

と好奇心でやってみた感も無くはない。

その上で自分を選ぶかどうか試した、とか?

いやでもそれ、マンガとしては救いがあるのか無いのか…

考察するようなマンガではないけど、じわじわと「この先どうなるのかな」と楽しみになる作品でした!

実写化とかアニメ化されるタイプの漫画家さんじゃないけど、「あーこの人のマンガの良さが分かる人は好きだな」と思えます。

まだ雁須磨子作品を読んだことが無い方も、ある方も、ぜひぜひ。
関連記事