圓城陽大(くらもちふさこ「駅から5分」「花に染む」)再考察ネタバレ感想
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彼女の漫画はほぼほぼ全て読んでいて(但し「ポケットにショパン」頃より古いのは読んでません)、単行本や文庫版で集めていましたが、引っ越しのタイミング等で捨ててしまい、その後改めて電子書籍で買い直していました。
でも「駅から5分」と「花に染む」は読み終えてからあまり時間が経っていない感覚だったので、まだ電子書籍を買っていなかったんです。

駅から5分 1【電子書籍】[ くらもちふさこ ]

花に染む 1【電子書籍】[ くらもちふさこ ]
ふと、また私の中に「くらもちふさこ熱」がやってきたタイミングになり、「海の天辺」「アンコールが3回」と共にこちらも買って再読しました。
いやぁー、覚えているようで覚えていないものですね。
そして改めて読んで圓城陽大(えんじょうはると)のイケメンぷりにドキドキしました!
先に「花に染む」を読み、その後「駅から5分」を読みましたが…うーむ、どうしてもこう、陽大の気持ち、恋心が掴みきれないっ!
そこが彼の魅力なのだけど、それでも分からない。
Wikipediaでもこの作品のページは、サラっとしたプロフィールしか書かれていません。
考察のような感想を書いている方もいるようですが、ちょっと自分なりに一度考え直したいなぁと思いながら、これを書いています。
ちなみに私は「花に染む」の最終巻8巻のネタバレ感想を書いていました。
ついに、「花に染む」が完結しました。花に染む 8【電子書籍】[ くらもちふさこ ]長かった…そして、えーと、私にはいまいちこの世界観というか、何が言いたいのかよくわからないまま終わってしまった、という感じです…。「駅から5分」からずっと読んできていましたが、登場人物の感情が分かりやすく、コミカルだった「駅から5分」と違い、「花に染む」はシリアスなお話でした。陽大の感情の読めなさは「駅から5分」と変わらない、...
当時の私もいまいちピンと来ていなかったことが分かりましたが、でも今とは少し違う見方もしていたようですね。
1番の当時との違いは、私はまだ「恋愛」というものをリアルに感じていたようです。
今はもう2次元は2次元と割り切っていて、でもそれはそれでドキドキして憧れるって感じ。
そんな風に自分が歳を取り、そして描いていた頃の作者の年齢に近付いたことにより、また違う視点が出ているかもしれません。
また、くらもちふさこのインタビュー記事も少し読みました。
そういえば、くらもちふさことよしながふみの対談も以前読んでいて、その時は「スパイものを描きたい」と言っていたけど、もう何年も新作は描いていないし、もう描くのを辞めてしまったんでしょうか?
※これ書いた後調べたらココハナで「とことこクエスト」というエッセイ漫画連載中でした!
くらもちふさこ×よしながふみ対談がオルビス2017.10シブロ掲載!
今日、オルビスから月刊誌「Sibro(シブロ)」の2017年10月号が届いていました。ちなみにこちら、以前は「hinami(ヒナミ)」という名前だった冊子ですが、数か月前から「Sibro」になりました。Sibroを逆から読むと…はい、ORBISになりますね~。で、今回のSibroは少女漫画特集になっていて、あの、くらもちふさことよしながふみの対談が掲載されていました!今年「花に染む」で第21回手塚治虫文化賞を受賞したくらもちふさこと、20...
女性漫画家さんの中には、吉野朔実のように連載途中で急死されてしまった方もいれば、バリバリに現役の萩尾望都のような方もいれば、岩館真理子のようにプツリと描かなくなる方もいます。
結婚や出産後に辞めてしまう方もいるけど、中高年で定年のように辞める方もいますね。
くらもちふさこのインタビューを全て読んだわけでは無いのですが、とりあえず「花に染む」に関して言えば、作品内で全て作者的には描き切っていて、そして恋愛マンガとして陽大に対するヒロインは「花乃と楼良」という認識であり、恋の結末は敢えて読者に想像の余地を残すために描いていないけど、作者内にはコッソリとこの2人のファンがちょっとガッカリする先があったようです。
虫ん坊 2017年6月号 第21回 手塚治虫文化賞 マンガ大賞受賞『花に染む』くらもちふさこさんインタビュー
コレを読んでまた分からなくなりました。
私は「雛(すう)」もヒロインだと思っていたんです。
ただ真相を聞いた編集部の方は「作品を読み返して、いろいろ想像してみてください」と書かれている。
ということは、「読み返せば、作者なりの恋愛マンガとしての結末は見える」ということかもしれません。
また「不条理な事件」について描きたかったというのもポイントだったこと、インタビューで知りました。
さて改めて2作品セットで読んでネタバレ考察の感想を書きます、が、これはインタビュー内で作者も言っているように、「敢えて描かずにミステリアスにして魅力を持たせる、読者が理解出来ないながらも惹かれるものにしたい」という構造のため、コレが正解、はありません。
最近ネットでは考察厨が多くて、しかも自分の意図と違うと作者にキレたり、大多数が同じことを言っていたらそれを真実と思い込む人もいますが、私は最近「日本人の読解力が世界的に見てもランクが落ちている」というデータの裏付けのようにも感じます。
この2作は伏線が張り巡らされていて、それが次々と回収されていく部分が多いのですが、実際には描きながら決められていってる部分もあるのだとか。
これ、よく漫画家さんが言いますね。
「このキャラのセリフや表情は、私が意図していたものではなくて、キャラが自分で動き出してやったことだったので、描いた私にも何故か分かり切らない」とか
「連載の締切に追われる中でネームを切っているので、大まかな流れはあってもその場で考えて進行している」とか。
だから時々、漫画家によっては過去のお話と設定の辻褄が合わなくなることもあります。
「人は誰でも間違える」ではなく「創作物だから」。
それを無理矢理読者が後から検証し、隅々まで考察しようとしても、そこには限界や間違いがある、と私は思っています。
私は特に「キャラが勝手に動き出した」と言う漫画家さん、好きですね。
これは大御所レベルの人にしか言えないことかもしれませんが。
若手ならそれで辻褄が合わなくなり過ぎたり、伏線が回収される前に打ち切りのため無理矢理終わらせることもあるだろうし。
またその時の世情で変わることもあると思います。
CLAMPの「X」のように、世情で連載中断したものもあれば、高河ゆんのように気ままにその時描きたいことをガーッと魅力的に伏線張り巡らせて描いていたのに、ポンっと途中で中断して未完にしちゃう人もいるし。
陽大の気持ちを紐解くにあたり、彼がどんな人かと、花乃、楼良、雛のことを過去から見ていきました。
そして、今まで気付かなかったことがあった気がします。
それは「陽大にとって花乃はたった一人の、自分だけの大切な人である」ということです。
3巻であの火事の時の雛と陽大のキスについて花乃に話した後、陽大は花乃に
「僕には特別な人だから。花乃がいなければ今の自分はいないからどんなことでも受け入れていきたいと思っている」と言い、花乃はそれに「なんかそれ、あんま嬉しくない」と返していました。
また西行の
花に染む 心のいかで 残りけん 捨て果ててきと 思ふわが身に
(この俗世間をすっかり捨て切ってしまったと思う我が身に、どうして桜の花に執着する心が残っていたことであろうか。)
が陽大そのもの、と言うのも、リアルタイムで読んでいた時にはそれほど深く考えていませんでしたね。
両親と兄を放火事件で亡くすまでの陽大は、よく笑うあどけない、でも長男の兄を立てる良い子でした。
19歳になった時の、雛から「史上最悪の良い子」と言われるような良い子では無く、素直さと周囲への気配りをしていた子。
読み返すまで私は雛と陽大のキスは火事の時の1回と思い込んでしまっていたようですが、改めて読み返すとその前の小学生の時点で雛からキスされていましたね。
その直前に陽大は
「雛は兄が好きな人だから、自分にとっても大事な人」
と言い切っています。
この時のキスはそれ程陽大と雛の関係に影響を及ぼしているエピソードがその後無かったため、失念していました…
花乃は「陽大は子供の頃からいつも、私より雛さんを優先していたから、彼女のことが好きなんだろう」と思っています。
でもそれは陽大には母譲りの生真面目さがあり、自分より兄を優先するのと同じように、自分の大切な花乃よりも雛を優先しただけなのではないでしょうか?
陽大にとって、流鏑馬の後に自分に興味を持ってクラスまで見に来たお隣の畳屋さんの娘の花乃は、自分だけの存在だったのでは?
もちろん兄含め3人で弓道をしていたけど、成功して思わず陽大に抱きついたのは花乃。
またこの漫画の中で何度か描かれているポイントとして
「ここぞと言う時には、大事な弓を信用出来る他人に咄嗟に手渡す」
というシーンが何度かありました。
陽大は花乃が畳屋の娘と気付き、仲良くなるキッカケとして弓道の練習用に畳を注文しています。
そして弓道を始めたばかりの花乃には、普段なら誰かが勝手に触ったら猛烈に怒った弓を、笑顔で触れさせたり、お下がりを渡したりしていました。
花乃が抱きついた時に、陽大は兄に弓を渡して両腕で花乃を抱き締めています。
そして後半、倒れた雛の元に駆け寄った時には、咄嗟に弓を花乃に託していました。
ラストの花乃が射終わったあと足袋のまま陽大を探しに行こうとした時には、花乃の弓を雛が受け取っています。
花乃は最後の試合の前に
「好きな人に背を向けさせて、こちらを向かせようとするのは不自然なことだ」
と同部の人の友情の話を聞きながら、恋愛に置き換えて考えていた。
他に好きな人がいても、そちらではなくこっちを見て欲しい、と言っても不自然なこと。
陽大に好きな人がいるなら、その人じゃなくこっちを見てと言っても相手の気持ちは変えられない。
花乃の中では「陽大は雛を好きで、でも事件のこともあったし跡取り問題もあるため、彼女ではなく楼良と付き合っていくんだろう」という推測をしています。
しかし楼良は「辛い時もその前も、ずっと一緒にいた花乃と陽大の絆は深く、自分の運命が太刀打ち出来るものではない。
でも、自分が陽大の望みのままに雛・花乃・陽大から教わった技術を身に付けて弓を引き、花乃のために陽大の役割を担うこと、それが自分の運命だった」と理解していたようでした。
雛は「自分が憧れていた陽向と陽大と花乃のように、花乃と楼良と弓を引きたい、という望みを邪魔している、と思っていた陽大が、実はその準備立てをしてくれていた」ということを知って救われます。
この3人で弓を引くことは、表向きは「陽大がまた花乃に笑ってもらえるため」となっていますが、そうならなくなった理由はやはり放火事件。(ただ陽大の前で、既に早気が治った時に花乃は笑っていて、その時に「笑顔を初めて見た」と陽大は言ってるんですけどね。ここは設定のブレかもしれません)
陽大は大事な兄を傷付けるキッカケを作った雛を許せない。
その為に大切な過去を花乃含めて消そうとし、2年間中学を休学して話せない、歩けないフリをしたり、花乃と決別しようとしていた。
それでも、どんなに過去を消したつもりでも、「美しい桜の花に執着する気持ち」のように過去が残っている。
それこそが陽大だったのかもしれません。
「何でも運命のように雛の思うように流れが進んでしまうこと」に苛立って抵抗しようとしていた陽大に、楼良が「運命ではなく、その人が望む方向に自発的に動いているんだと思う」と言っていて、私はコレを以前は「やはり陽大は雛が好きなのかな?」と思う伏線と捉えていたのですが、そうではなくこれは「雛が望むこと(陽向と陽大と花乃の射への憧れ)」と「陽大が望むこと(花乃が自分のままに弓を引けるようになること?自分の花乃への想いを伝えること?)」が一致していたということだったのかな、と思いました。
関係がどこまであるか、ワザとか改変の部分があるか陽大の一人称が「僕」「俺」「自分」で分けられていることには気付きました。
●花乃…幼少期から事件までは「僕」、花染町で再会してから花乃が茴香大学に合格するまでは「俺」、その後初めて会った設定の関係にしたためか「僕」に変えています。
●楼良…「自分」、但し雛を思わせる「運命」の話をした時は「俺」
●雛…「僕」
花乃に「俺」を使っていたのはほんの僅かな期間の2巻の間だったんですが、そこだけ間違えたのか、ワザとか気になりますね。
でも楼良にも使っていたから、本来は「俺」なのだけど、花乃とは「花染町で出会った」という仮想世界に入った時に切り替えたのかも?
一見、陽大は女性に無欲のように見えます。
楼良と付き合うことについては、「花に染む」3巻で後輩たちが「賭けに負けたからって、好きでも無いのに付き合うのは誠意が無い」と責めたときには「それだけでもないんだ」と返していて、後輩たちは陽大が楼良に好意を持っているのかと受け取るシーンがありました。
でもコレは後半に分かるけれど、花乃のために楼良を利用するのが目的で付き合っていたのでしょう。
幼少期に雛にキスをされて、ドキドキはしていただろうけれど積極的に恋心を持つ様子ではなかった。
1つのベッドで花乃と眠っても「何も心配することは起きない」と思っている。
ちなみに花乃のベッドで二人が抱き合って眠ったシーンは、中学時代の合宿の時の再現だったんですね。
兄が雛からもらった景品のために我慢大会を頑張っているのに、眠りながら服を脱いでしまっているところを一人無言で見ていた陽大は、花乃に声をかけられて微笑み、そのまま花乃に抱きつきます。
その時陽大の手が震えているのを感じて、花乃は何か陽大が変だということは察していました。
その後の試合の日にも、どうも陽大は雛から「オススメの落ち着くスポット」を教えられ、そこで会いたいと思われているのが分かっていて兄に行かせている。
これは「陽大は雛から小学生の頃キスされたことで意識していたけど、兄のために諦めている気持ちを花乃にしがみつくことで誤魔化した」というようにも見えます。
でも「兄が好きな雛が、自分のことを好きだということに罪悪感を覚えている」というようにも思えます。
花乃のことが好きだから抱きついたというよりは、堪らない気持ちを花乃に抱きつくことで癒やしたかった。
それが、成長してから花乃が慰めるつもりで抱きしめた時に繋がっていたとは。
これは恋愛感情と言うより、唯一無二の互いに大切と思い合える存在同士の行動だったように思えてきます。
楼良とキスをしても(よく考えたら吐いた直後なのに…)、アレはあくまでも自分の望みを叶える為に行動してくれた楼良への感謝として、彼女を喜ばせるためにキスしていたように思えました。
もしくは、オーロラ姫(オーロラは夜明けの光という意味)を目覚めさせた、楼良の中にあるプリンセスラインの夢から目覚めさせ、プリンスとして花乃を救う役をさせるため?
2回キスしたのは、目覚めのためと、感謝なのかな。
ただ楼良を追い出した直後、ロボット作りをするイリヤと一緒に倒れるロボットの股を覗き込んだりしていて、それを後輩にツッコまれるような健全な男の子な部分があるんですよね。
ここで他のくらもちふさこの漫画「東京のカサノバ」を例に出すと、ちいちゃんは多美子のことをずーっと大好きで、血の繋がりが無いと知る前からキスをしていて、そして知った後も一緒にベッドで眠ったり、おでこにキスしたりしています。
でも多美子が本当の兄妹じゃないと知っている、と確信するまでは、恋人のようにキスをし合うことはしていませんでした。
そしてそんなにずーっと子供の頃から多美子のことが好きだったのに、実の兄妹じゃないと分かった数年後には他の女性とキスしていたし、カメラマンの上司とも寝ていた…
兄に恋する妹、くらもちふさこ「東京のカサノバ」やっぱり素敵!
くらもちふさこ、大好きです!大御所漫画家なのに、絵柄は時代に合わせて少しずつ変えていて、でもずっとキレイでかわいい!登場する女の子たちは、直情的で素直で一途で、ユーモアがあってかわいい。そして、男性がとにかく魅力的!自然体で自分勝手なようで、優しくて一途。自分に近寄ってくる女たちとテキトーに笑いながら遊んでも、大事な女の子は1人だけ。くらもちふさこのマンガは一時期買えるものは全部持ってたのですが、...
くらもちふさこの描く魅力的な男性って、本命がちゃんといながらも、他の女性とキスしたり寝たり出来るし、更に本命と一緒のベッドで眠っていても手を出さない。
まぁ「天然コケッコー」の大沢くんは、貪欲に健全にグイグイと関係を進めようとしますが…
自分に好意を持っている女性に対して飄々と接して、気を持たせるようなこともして、でも恨まれないように出来る、というのが当時のイイ男だったんだな~って思います。
多分今の時代だと、文句を言う女性読者が出てきそう…
ただそういうことを考えると、陽大は女性として花乃のことが好きで、でもそれと同じに親友として大事な人であって、お互いのために敢えて手出しはしないでいられる精神を持っているようにも思えます。
が…完結後のインタビューを読むと、花乃か楼良のどっちとくっつく、とかじゃない風な物言いにも受け取れるんですよねぇ。
私が8巻発売直後気付いていなかったんですが、多分最後のシーンから考えるに
比々羅木神社を継ぐのは陽大。
花染神社を継ぐのは雛。
なのではないでしょうか?
元々は2人の祖父が陽大の母親を気に入っていたので、自分の跡は長男の雛の父ではなく、弟の陽大の父に継がせようとしていた、というエピソードもありました。
お祖父ちゃんは出てこなかった上に、長男の雛の父は神職になる勉強をした人で、次男の陽大の父は比々羅木神社で宮司をしていて…と関係性が謎だったのですが、読み返すと祖父は比々羅木神社の宮司、と雛が言っていました。
ということは、陽大たちのお父さんと違って、雛のお父さんは実家ではない花染神社で働いている、ということ?
お祖父ちゃんは火事の前には亡くなっていたんでしょうか?
雛は神官になるための試験準備をしているようだし、陽大が比々羅木神社で流鏑馬をして終わるし、過去を乗り越えた陽大が倭舞に戻る可能性はありそうです。
そうなると花乃と一緒になるって筋もありそうなんだけどなぁ。
ただ花乃に告った後輩もいたから、花乃はそっちと一緒になる可能性もありそう。
まぁこの先他の人と出会うこともあるかもしれないけど。
雛に関しては、「過去に陽大のことが好きだった」という部分はあると思います。
ただ、それよりも「自分が花染神社を継ぎたい」の方が強いのでは?
私は彼女に好意を持つ男性が、最終的には口説き落とすのかなぁという気はします。
雛があそこまで露骨に嫌そうな態度を取るの、それはそれで他の人にしないことですし。
そういう意味では、露骨に楼良に怖い態度を見せる陽大というのも、ある意味素を見せられる相手なのかなぁ。
ちなみに神職になる過程に関しては、私は成田美名子の「花よりも花の如く」で知識を得ています。
神社だけの経営で生活するのは大変だから、掛け持ちで別の仕事もしていることが多いみたいですね。
「花よりも~」でも神職と弓道はセットだったので、ここは納得です。
また、「花に染む」には出て来ませんが、「駅から5分」では陽大は超能力者のように金属を曲げる力を持っていました。
アレはミステリアスさと、霊感のようなものの象徴だったのかなぁ。
うーん、考えてもキリが無いですね。
ただ花乃は陽大と一緒にいたくて、そして楼良と陽大が一緒にいる時に側にいるのは辛がっていた。
それに陽大が気付かないとは思えません。
その感情が「陽大を好き」なのか「陽大のようになりたい」だったのかは明確にされていないし、そのどちらも混ざっていたのかもしれない。
花乃と陽大が付き合うということになると、完全に親友として支え合ってきたのとは別の感情も出てきます。
ただそんな異性の親友がいる人達の間に入り込める人っているかなぁ。
花乃はイリヤにもちょっと嫉妬していましたしね。
(※この後「くらもち花伝」を読んだら、陽大とイリヤの関係性は「友情を越えた神聖なもの」という関係性を出したくで入れていたそうです。なら花乃と陽大では?と思うところですが、つまりは花乃とはそういう友情のみの関係では無かったということかもしれませんね)

くらもち花伝 メガネさんのひとりごと【電子書籍】[ くらもちふさこ ]
陽大がイリヤを気に入っていた理由は明確に出ていませんでしたが、そこは共に親を亡くしたことが共感を産んでいたことと、自分に幻想を抱かないイリヤとの関係が居心地良かったような気もします。
ちょっと謎なのは「雛の母親を好きだったのは兄」と陽大は後半気付くけど、雛は「母に懐いていたのは陽大」と思っていたこと。
これは陽大が幼い頃のことで記憶が無いのか、兄の好きな伯母だったから無邪気に懐いていたのか、微妙なラインな気がします。
(※ここも後で「くらもち花伝」を読んだら、陽向のエピソードが全然無いから、と編集さんに指摘されて思いついた後から加えたエピソードなのだそうです)
…と、ここまでダラダラと書いて頭を整理してみると、やはり
「作中内で陽大が好きなのは花乃」
と思えてしまいます。
多分、花乃から告白されたら付き合う。
でも花乃のお陰で前に踏み出したことにより、新たな相手が出てくる可能性もあるのかなとも思いました。
陽大は決して花乃に怖い自分を見せない。
(栗を食べながら話す時に、雛への怒りで机を叩いたことはあったし、雛に冷たい態度を取ったり、楼良の腕を掴んで引っ張るところは見せていましたが)
花乃の前では笑顔だったのに、自室では楼良にキツイことを言う。
楼良が自転車に轢かれそうになった時、肩を押して脇に避けさせたけれど、抱き寄せて守ろうとはしなかった。
花乃ならあの前の時点で自転車の邪魔になることはしませんが、それでも咄嗟に抱き寄せて自分が盾になるし、ガードレール側をそもそも歩かせるのでは?
損得勘定無く接せて、自分の良い面だけでなく悪い面も見せられる相手は、京都で出会った少年のような人なのかもしれません。
うーん、しかし花乃に近付く男が現れたら、めっちゃくちゃ激しく嫉妬しそうなんだよなぁ…陽大…。
花乃の前では笑顔で接して、陰ですごい嫌味言いそう。
クールに見えて執着心や独占欲を持っている、というのも、くらもちふさこの描く魅力的な男性像であり、そして作者の好きなタイプとして陽大は作られているようなので、一旦陽大が花乃と一線を越えたら、もう誰も介入させない気もします。
大体、陽大を越えられる男なんて、そうそういなそうだし。
陽大にとってキスは、好きでなくても出来ることで、好きな人と出来なくても大丈夫なこと、という段階っぽいのよねぇ。
そして最初は花乃のベッドで一緒に寝ていたけど、楼良が家を出た後に
「こっちで寝る?」
と自室で花乃に聞いた時の陽大は、アレは試していたように思えます。
「自分のことを好きな楼良が、陽大がいないのに1人では寂しいし辛いから、と寝なかったベッドで、花乃は一緒に寝る?」
と聞いているようなもの。
それは花乃のベッドに下心無く自分から入り込むのとは別で、「俺のところに来るか?」という意味にも取れる。
それをニヤリとした笑顔で聞くところがまた、裏ある感じするなぁ。
「親友」と言われて喜び、「男になりたい」と言う花乃を見ていたら、「花乃は自分を異性として好きなのではなくて、自分自身になりたいのかな」と陽大は思って恋心を出そうとは出来ない気がします。
それを察して出さないのが「親友」なのだろうし。
花乃は「女として見られること」というか「恋愛対象として見られることで、これまでの信頼関係が壊れること」を嫌がっていて、あまり女っぽい格好はしません。
が、長い髪は子供の頃から伸ばしたまま。
長い髪はある意味手入れが楽なんですが、中学生の時に陽大と一緒に馬に乗り、背後から抱きつかれて「尻尾みたい」「草の匂いする」と言われ、「そりゃい草の匂いだ」と返して笑顔になられた時のままにしているのでは?
陽大が花乃のベッドの上に寝て「い草の匂い…」と言うのも、ここに繋がりますね。
と、色々想像出来るのがこの作品の良いところなのでしょう。
繰り返し読むことで繋がる話が散りばめられているところ、すごいですね。
第一話の冒頭、中学生の陽大が花乃に言いかけ、その後「もったいぶってる」と言っていた話。
コレがその後、雛から聞かされた「大礼祭で陽大が流鏑馬をやる」という話だったと分かる。
陽大の口から聞きたかった、どれだけ陽大にとって嬉しいことか分かっているから、自分も嬉しいのに、と思う花乃。
そして、この時には出来なかった大例祭での流鏑馬を陽大がして、物語が終わる。
こういうブレない設定があちこちにある。
まぁ恋愛マンガだけのお話ではなく、「深く考えずに犯罪をして他人の人生を壊す存在」や「想像力」というものに注意喚起する作品だったのだと思えば納得です。
いつか民放ではなく配信系で実写化されたりするかな?
多分そういう話は何度か出て、でも難しくて実現していないような気がするのですが。
もしくはアニメ化しないかなー。
うん、実写化よりはアニメで観てみたい気がします。
その時にまた新たな監督なりの解釈が出てきて、解釈違いで割れたりすることがあったら、それはそれで楽しいかもしれない。
と、再読して改めて思いました。
あ~やっぱりくらもちふさこの作品、好き!
まだ未読の方がいたら読んで欲しいし、久々に読み返そうって方がいたらそれはそれで良いなと思います!
※この後、まだまだ考察を続けていて、やっとちょっと私なりに腑に落ちました。
●「くらもち花伝」を元に「花に染む」の陽大と花乃と楼良と雛の「運命」を再考察
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