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幻月楼奇譚6巻(今市子)ネタバレ感想~若旦那と与三郎がついに床入 #BL

先日、今市子の「幻月楼奇譚」最新刊6巻が発売されました。

細々となが~く続いているこの連載、あとがきを読んだら連載開始から20年経っているそうです…!


幻月楼奇譚 (6) (キャラコミックス) コミック – 2022/2/25 今市子

以前はコミックスの発売日を本屋でチェックしたり、ネットで調べたり…としていたけれど、最近は「何か新刊出てるかな?」と特定の作家の名前で検索かけて、出ていたら電子書籍で買うことがほとんどになりました。

新しい作家さんの発掘を全然しなくなったなぁ…

ということで、BL漫画も今時のものはほぼ知りません。

生々しいBLはそこまで好きじゃない、ストーリーとして面白いものが読みたい、という私には、今市子のBL作品は一番好きなタイプになります。

特にこの「幻月楼奇譚」はホラーものなので、「百鬼夜行抄」と並んで好き!

でも1年間に1話完結の話を書くだけ、なので、単行本が出るまでにものすごく時間がかかっているそうで…

久々に出た6巻、何が大きく変わったって、ついに、ついに若旦那と与三郎が体の関係を持った、というのが大きい!ので、この興奮を書き残そうと思いつつ、2人の関係性の変化を改めて確認しようと1巻から読み返しました。(なのでネタバレ感想を書くのが遅くなっています…)

このネタバレ感想を読む人は既にあらすじを知っているだろうと思いますが、ザックリ説明すると

…限りなく昭和初期に近い頃、老舗の鶴亀味噌の若旦那・鶴来升一郎と、吉原の幇間・与三郎(本名は杉浦周士で、芸名は神田川月平だけど、体中傷だらけなのであだ名の与三郎で皆んな呼んでいる)が、心霊絡みの事件と関わっていく物語。

与三郎の方は4巻で「今年27歳」と言っていて若旦那より年上、と言われていますが、若旦那の年齢がハッキリ書かれていません。

多分その時点で24歳くらい?

1巻では若旦那は「大学を卒業したばかり」と言われていたので23歳くらいだったのでしょうか。

4巻で太郎の奥さんの妊娠と出産、6巻ではもうその子が下駄を履いて外歩きをしているので、1巻から6巻までの間に3年以上は経っていそう。

また6巻の時点で、若旦那のお見合い相手候補一覧が出た時、最年少は26歳なのに「若旦那より年上」と言われていました。

若旦那の産みの母親で、先代の幻月楼の女将は1巻の時点で5年前に他界。

そのすぐ後、学生だった与三郎は先輩の伊坂宣明に幻月楼で体中を刀傷だらけにされ、1年間行灯部屋で生死を彷徨う間に幽霊が視えるようになっていました。

伊坂はずっと与三郎のことが好きで、でも先輩として尊敬はしていても恋愛感情が無かった与三郎は、自分と同じ女郎と関係を持つ伊坂の執着心から逃れるために吉原の掟を破って他の女郎と寝たのですが、それを知った伊坂が激高して与三郎を殺そうとしたのです…

そんな与三郎に現女将の蝶子が「怪談を特技にした幇間になれば?」と勧めて現在に至っています。

1巻の最初のお話は、若旦那の実父が幻月楼の帰りに亡くなり、その後与三郎が若旦那の伯父(血の繋がらない父の本妻である母の兄)から頼まれて騒動を起こしていることが発覚する、というものでした。

自身の命を狙っているものがいるらしい、その犯人は腕に刀傷があった、というところから、若旦那は与三郎が事件に加担していることを突き止め、流れで女性の芸者ではなく与三郎を寝床に連れ込みます。

この時点では若旦那は別に男色家だったわけではないのですが、偶々腕の傷を確認しようとした時に若旦那の肘が鳩尾に入って気絶してしまった与三郎の着物を脱がせ、全身に刀傷があること、先代の女将が言っていた幻の月(盃に浮かんだ光)が顔にあたった顔の美しさを気に入り、「俺は与三郎の旦那」と公言するようになります。

与三郎も最初は若旦那に気はなく、ただお金のために調子を合わせつつのらりくらりと躱していたのですが、徐々に相思相愛になっていく…と。


ちなみにTwitterで指摘されているのを見て気付いたんですが、1話の設定にミスがあったんですね。

若旦那を殺して自分の子供の太郎(味噌職人で若旦那の従兄)に鶴亀味噌を継がせようとした男性を、若旦那は「叔父(父または母の弟、兄の場合は伯父さん)」と言っています。

そしてその人は若旦那の父親のことを「義兄さん」と呼んでいます。

が、母親はその人を「兄さん」と呼んでいる…

つまり、太郎の父親で現在服役中の若旦那の母親の兄弟が、兄なのか弟なのか分からなくなっている、と…

また太郎が若旦那の母親に「叔母さん」と言うシーンもありました。

そもそも母の実家は末の弟が継いだ、とのことなので、何故兄が鶴亀味噌で働いていたのか分かりません。

ただ、今市子さん自身は富山県の田舎で親戚がたくさんいる家庭の出身、とのことなので、その辺りの関係性はごっちゃになっても仕方ないもの、と思っている…のかな?

それよりも「若旦那の髪の分け目が毎回右か左か分からなくなって間違える」をよくあとがきに描いていますし。

時々こういう描き間違いや設定ミスを今市子さんはネタにしていますが、それでも1話完結のストーリーをこれだけ続けられるってすごいな、と改めて読み返して思いました。

百鬼夜行抄の方もですが、時々謎が謎のままポン…と置かれて終わる話もあります。

インタビューを読むと、今市子さん自身が勧善懲悪は好きではないし、スッキリと終わらない話の方が怖さが出るから、と話していました。

幽霊になる人々の痴情のもつれや金銭トラブルを、探偵のように若旦那と与三郎で解決し、それを与三郎が新たな怪談のネタにする、という設定なので、色んな要素が絡み合っていてお話を考えるのが確かに大変そう…

で、その合間合間に、ちょっとずつ若旦那と与三郎のキスシーンが挟み込まれ、徐々に与三郎の方も誘うような素振りを見せるようになっていたのですが、結局邪魔が入ったりして全然進展していませんでした。

あー、これは物語の最後まで2人は寝ないか、最後にやっと寝るって感じなのかな、と思っていたけど、6巻の2話めでやっっっっっっっっっっっと寝た上に、まだ話は続いているので良かったです!
しかし、色街の手管であれこれと長引かせていた与三郎ですが、改めて読み返すと心情の変化が良いですね。

自分に執着した伊坂を見て、男の欲の怖さを実感していた与三郎。

霊となって自身の弟を通して一度だけ関係を持ったようなので、与三郎自身は男色にそこまで大きな抵抗は無かったようですが、基本的には彼は女好き。

決まった相手は作らず、ただ怪談のネタ集めのためにお姐さん方と関係を不定期に持ち、それが若旦那にバレて嫉妬され、キスして和解はするけど床入りまでは許さない、的なパターンが続いていました。

でも2巻の時点で、女将曰く

「何をされても何も言わない」

という暗喩めいた誘い方を与三郎はしていました。(結局、情報収集に利用した姐さんが怒鳴り込んできたことで若旦那が、誘いに気付かないままその場は流れてしまいましたが…)

3巻では待ち合いの部屋で若旦那が待っていて、でも与三郎は怖気付いて女将に泣き言をいい、結局事件が起きて床入りは無し。

4巻ではお互い同意のもと、与三郎の家で服を脱ぎかけたところで富永(与三郎の兄の友達)が来て寸止め、その後行灯部屋でまた脱ぎかけたところで若旦那が家の者に呼び出されて寸止め…

ただ、若旦那が従兄の太郎の結婚に不機嫌なのを見て嫉妬したり、その言い争いで

「いっそ男芸者と寝て落ちるところに落ちてみては?」

と言って部屋を取ったのに行かなかったり、と、与三郎の中でも何度か気持ちが揺れながら進展はしていました。

太郎の結婚と、太郎の子供の光太の誕生で、若旦那の気持ちが自分以外に向いていることに与三郎が嫉妬したのは大きな契機っぽいですね。

6巻でいざ関係を一度持った後は、与三郎はあからさまに嫉妬心を見せるようになりました。

金蔓として若旦那を手放したく無いだけでなく、完全に恋人として見ていて、でも「いつか若旦那が女と結婚してしまうかも」という不安も持っているようです。

今市子さんのBL作品では、あまり「男同士だから先はない」的なリアルな悩みは出てこない印象があります。

女とも付き合ってきていたけど、運命的に好きになった相手は男だった…で、関係を持ったあとはハッピーエンド、というのが多かったような。

過去の短編だと、「いとこ同士」とかは「この先俺たちどうなるんだろう」というのもありましたけど。


いとこ同士 (ダリアコミックス) [ 今市子 ]

基本的にはギャグが盛り込まれたストーリーものの中にゲイがいる、という感じのBLで、生々しいシーンは無いのが特徴。

若旦那に関しては、与三郎と出会ってから一切他の女性に興味を持っていません。

過去の女性も短期間に踊りの師匠と関係を持ったりしていたけど、そんなに積極的なタイプでは無いですね。


「幻月楼奇譚」自体は次巻もいつか出る、とあとがきに書かれているので、まだお話は続きそうです。

今市子さん、年齢的にはもう60歳越えてるくらい?

インタビューで「学生時代に投稿して掲載はされていたけど、好きに描きたかったのでアシスタントをしながら同人誌を描いていたので、11年くらいブランクが空いてからデビュー作が出た」と言っていて、それが1993年になるようです。

「ホームレスサラリーマン」以降も現代ものBL出るかな?と思っていたけど、今のところ発売は無し。

「百鬼夜行抄」はかなりの長期連載となっていてまだまだ続きそうですが、以前に比べると仕事量はセーブしているのでしょうか。

基本的に「忘れていた頃新刊が出る作家さん」というイメージです。

こちらとしては、このまま続くも良し、ですが、やっと若旦那と与三郎が床入りしたので、これ以降は出ても1冊か2冊程度なのかな?という気もします。

どのくらい売れている作家さんなのか分からないのですが、私のように細々とずーっと愛読しているファンはたくさんいるんでしょうね。

しかし若い子にオススメしたら、どういう反応なのでしょうか…

新しく友達になったアメリカ人の若い女性にオススメしてみたいのですが、日本語はかなり分かる方と言っても、幻月楼はかなり昔の言葉が多いので理解出来るか微妙なところです。

基本的には私と同世代くらいのファンが多いのかな?

まぁ漫画は何年前のものでも、今はいつでも気軽に電子書籍で読めるようになったので、年代問わずなのが良いところ。

私は古いマンガも面白いものならいつでも読みますが、最近の若い子は新作を追うだけでいっぱいいっぱいだってのも聞きますし、その辺りの流行はいまいち分かりません。

「おっさんずラブ」とか「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」が好きな人は、今市子さんの漫画も好きだと思うのですが。

いや~しかし、若旦那…やっと願いが叶って良かったね。

情事の後に全く若旦那の態度は変わらずだったので、定期的にそういう関係が続くのか分かりませんが…

与三郎は幻月楼の中の部屋で関係を持つのは嫌だ、と言っていたし、行灯部屋だと先代の女将の邪魔が入るかも?なので、結局そこまでの関係は与三郎の家で、ということになるのでしょうか。

ところで蝶子さんは年齢不詳となっていますが、まだ子供が産める年齢ではないか?と思わせる発言を与三郎はしています。

跡継ぎの予定は無い、と言っていますが、流れ的には先代の女将の息子である若旦那が後見人となり、与三郎が幻月楼の主人となる未来があるのかな、と私は予想しています。

鶴亀味噌の味噌を使って、味自慢の茶屋として幻月楼が続く、というのはアリですよね。

リアルに日本の歴史を考えると戦争が始まってしまうのですが、そこまでいかない内に終わらせるだろうと思います。

改めて読み返すと、若旦那は結構霊感がありながら、吹き飛ばす力も強いという不思議な色男。

与三郎は1巻ではそこまでイケメンとして描かれていませんでしたが、話が進むごとに色気のある良い男、と表現されるようになっていて、幽霊の話も怖くて面白くて、繰り返し読んでも飽きない漫画です。

のでBL作品と言い切るには微妙な気がするのですが…

もしまだ読んでいない方がいたら、今からでもぜひぜひ!おすすめです。
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