#君たちはどう生きるか ネタバレ感想~マザコン少年の反フェミニズム冒険譚かつ反戦映画
遅ればせながら、ジブリ新作「君たちはどう生きるか」を観てきました。
U-NEXTのポイントが1,300あって、ファーストデーなのでそのままチケット購入に使えたので良かった、かな。
ちなみに「ジブリ作品は好き?」と聞かれたら
高畑勲の作品はストーリー含めて好きだけど、宮崎駿作品はアニメーションの見た目だけ良くて、中身は無いと思う
と答える派です。
唯一「風立ちぬ」は好きで、映画館で泣きました。
風立ちぬ [DVD]
子供の頃はトトロとか魔女の宅急便をもちろん観ていて、トトロのぬいぐるみとか親に買ってもらってましたが、大人になってから観た「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」や「崖の上のポニョ」等などは、「大団円みたいに急に終わってるけど、共感出来ないところだらけで消化不良」と思うことばかりで…
なので、「君たちはどう生きるか」もあまり期待せず、ネタバレ感想もほぼ目を通さずに観ました。
私の周囲では特に話題にならないままで、唯一観た人は「面白かった」と言ってましたが、その人はそもそもあまり悪いことは言わない人なんですよね。
パンフレット販売時期を遅らせたり、情報をほとんど出さずに公開したり、トップコート所属俳優たちを多く起用し、かつその中の菅田将暉と親しい米津玄師とあいみょんも関わっているというキャスティングは意外だなと思ってました。
トップコートの社長もスタッフの中に名前が入ってましたね。
ネタバレ感想、と今更言うのもなんですが、私の感想は
キレイさと、グロテスクさのある絵や動きはアニメーションとして高評価出来る。
ストーリーは、今までの宮崎駿作品と同じようなもの
という、特にすごくオススメとも、つまらないとも言えないもの、です。
一応パンフレットも買いましたが、大したことは書かれていなかったから買わなくて良かったかも…
宮崎駿の自伝的な作品、というのはパンフレットを読んで知りましたが、それはきっとググれば出てくる話なのでしょう。
3年で作るつもりが7年かかった、というのも、まぁジブリっぽいですね。
設定として引っかかっているのは、
冒頭で眞人には兄達がいると思ってたのに、長男だった…ということは、お母さんのいる病院が燃えていると話していた男性達は、お父さん以外は誰だったの?
ということと、
何でナツコさんは既に妊娠してるの?
ということです。
「火事だ」
「お父さんを起こさないと」
「お母さんの病院が燃えてる」
「眞人は家にいなさい」
というやり取りがあったので、お父さん=眞人の父親のことかと思っていたんです。
特にその説明を見かけていないのですが、東京の家で一緒に暮らしていた人たちは父方の親族?
男性3人くらいで空襲で燃えたらしい病院に駆けつけていたし、使用人らしきお婆さんとかいたけど、あの人達はその後どうしたんでしょうか?
また、その2年後に東京から母方の実家に引っ越していますが、その時点で既にその地にお父さんの新しい工場(戦闘機の屋根を作ってる?)が稼働していて、母の妹であるナツコさんは既に胎動が分かるくらいの妊婦さんになっていました。
なのに、眞人と会った時にナツコさんは
「赤ちゃんの時に会っているの」
「私はあなたの新しいお母さんになるの」
と話していましたね。
ということは、眞人とナツコさんが再会する前の時点で、お父さんとナツコさんは肉体関係を持っていたことになります。
亡くなった妻の姉妹と再婚、というのは昔ならよくある話だから、それは分かる。
戦時中だから、疎開を兼ねて母方の実家に身を寄せることになったのも分かる。
しかし、再婚を決めた時点でお父さんはナツコと息子をすぐに会わせていない、というのは謎です。
お父さんとしては、妻の死後にナツコさんと連絡を取る内に「じゃあ僕らで再婚しましょう。そしてこの土地で新たな工場を作って戦闘機の仕事を受注し、疎開も兼ねて息子の眞人もこっちで暮らせます」という流れだったのでしょうが、その間に眞人とナツコさんが会う機会があってもおかしくない、というか、無いと変な気がするんだけど…
ナツコさんがいつ「姉の旦那さんと結婚しよう」と決めたのか分かりませんが、あんなにシッカリとした感じの女性なのに、眞人と会わない内に妊娠してそのままなし崩し的に「これから新しいお母さんになるの、よろしくね」と言えるタイプと思えませんでした。
ただそこは男性主観のご都合主義なため、ナツコさんはただただ「甥の眞人さんは、急に新しいお母さんって言われても戸惑うわよね…頑張って気を遣ってあげないと」とだけ思っている様子。
他にもチラホラと気になるところはあります。
そこに触れる考察記事を2つくらい途中まで読みましたが、私が気になる点に触れていなかったり、解釈違いだったので、読むのを止めました。
「眞人が自分で頭を傷付けた理由」
とか書かれていましたが、それはプロのライターだろうが一般視聴者だろうが、何を想像してもその人の解釈次第になります。
私は「あー、田舎の子供達から嫌がらせされたから、ワザともっと大きな怪我をし、敢えて『転んだだけ』と言うことで、地元の子供達を悪者だと父親に思わせたかったんだな」とだけ受け取りました。
考察だと更に「継母への不満」とかも足されていたけど、まぁ理由なんて色々含まれているものでしょう。
基本的に眞人は年齢の割に大人びていて、達観したところのある子。
母の大叔父さんが頭が良過ぎておかしくなった、ということなので、眞人もかなり賢い設定みたいですね。
戦時中なのに、かなり裕福なおぼっちゃま故に、マザコンが故の不満のみに囚われて暮らしていられるご身分なわけですが、そこに共感し辛いと思ってしまいました。
ナツコさんはねー、本当に、宮崎駿作品らしい男のご都合主義に合わせた理想像みたいな女性よね。
大体ヒロインは美人で、機転がきき、物分かりが良く、優しくて我慢強く、行動力もある。
宮崎駿の年齢を考えたら、そういうものなのでしょう。
今回は眞人のことを「キレイな顔をしている」とハッキリとイケメンと位置付けるセリフがあったのは意外でした。
とはいえ「母親似」というセリフもあったので、やはり「眞人のお母さんは美人」=「お母さんにソックリの妹であるナツコさんも美人」=「眞人はイケメン」というのが繋がっている話。
結局のところ、美形のお母さんを理想的に思わせる設定の一部だと思います。
「かぐや姫の物語」とは相反する価値観ですね。
かぐや姫の物語 [DVD]
かぐや姫は、成長するに連れて自由さを失い、女らしい振る舞いを強制されることに嫌気がさしていた。
高畑勲の描く女性たちは、男の理想像に沿おうとはせず、自分らしさを追求する中で葛藤し、その上でありのままの自分を認めてくれる男性を好きになる印象があります。
一方、宮崎駿の描く女性たちは容姿も才能もあるけど、メインの主人公男性を引き立てる内助の功で魅力を発揮する傾向があるかなぁ。
それを「反フェミニズムだな」と私は捉えています。
U-NEXTのポイントが1,300あって、ファーストデーなのでそのままチケット購入に使えたので良かった、かな。
ちなみに「ジブリ作品は好き?」と聞かれたら
高畑勲の作品はストーリー含めて好きだけど、宮崎駿作品はアニメーションの見た目だけ良くて、中身は無いと思う
と答える派です。
唯一「風立ちぬ」は好きで、映画館で泣きました。
風立ちぬ [DVD]
子供の頃はトトロとか魔女の宅急便をもちろん観ていて、トトロのぬいぐるみとか親に買ってもらってましたが、大人になってから観た「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」や「崖の上のポニョ」等などは、「大団円みたいに急に終わってるけど、共感出来ないところだらけで消化不良」と思うことばかりで…
なので、「君たちはどう生きるか」もあまり期待せず、ネタバレ感想もほぼ目を通さずに観ました。
私の周囲では特に話題にならないままで、唯一観た人は「面白かった」と言ってましたが、その人はそもそもあまり悪いことは言わない人なんですよね。
パンフレット販売時期を遅らせたり、情報をほとんど出さずに公開したり、トップコート所属俳優たちを多く起用し、かつその中の菅田将暉と親しい米津玄師とあいみょんも関わっているというキャスティングは意外だなと思ってました。
トップコートの社長もスタッフの中に名前が入ってましたね。
ネタバレ感想、と今更言うのもなんですが、私の感想は
キレイさと、グロテスクさのある絵や動きはアニメーションとして高評価出来る。
ストーリーは、今までの宮崎駿作品と同じようなもの
という、特にすごくオススメとも、つまらないとも言えないもの、です。
一応パンフレットも買いましたが、大したことは書かれていなかったから買わなくて良かったかも…
宮崎駿の自伝的な作品、というのはパンフレットを読んで知りましたが、それはきっとググれば出てくる話なのでしょう。
3年で作るつもりが7年かかった、というのも、まぁジブリっぽいですね。
設定として引っかかっているのは、
冒頭で眞人には兄達がいると思ってたのに、長男だった…ということは、お母さんのいる病院が燃えていると話していた男性達は、お父さん以外は誰だったの?
ということと、
何でナツコさんは既に妊娠してるの?
ということです。
「火事だ」
「お父さんを起こさないと」
「お母さんの病院が燃えてる」
「眞人は家にいなさい」
というやり取りがあったので、お父さん=眞人の父親のことかと思っていたんです。
特にその説明を見かけていないのですが、東京の家で一緒に暮らしていた人たちは父方の親族?
男性3人くらいで空襲で燃えたらしい病院に駆けつけていたし、使用人らしきお婆さんとかいたけど、あの人達はその後どうしたんでしょうか?
また、その2年後に東京から母方の実家に引っ越していますが、その時点で既にその地にお父さんの新しい工場(戦闘機の屋根を作ってる?)が稼働していて、母の妹であるナツコさんは既に胎動が分かるくらいの妊婦さんになっていました。
なのに、眞人と会った時にナツコさんは
「赤ちゃんの時に会っているの」
「私はあなたの新しいお母さんになるの」
と話していましたね。
ということは、眞人とナツコさんが再会する前の時点で、お父さんとナツコさんは肉体関係を持っていたことになります。
亡くなった妻の姉妹と再婚、というのは昔ならよくある話だから、それは分かる。
戦時中だから、疎開を兼ねて母方の実家に身を寄せることになったのも分かる。
しかし、再婚を決めた時点でお父さんはナツコと息子をすぐに会わせていない、というのは謎です。
お父さんとしては、妻の死後にナツコさんと連絡を取る内に「じゃあ僕らで再婚しましょう。そしてこの土地で新たな工場を作って戦闘機の仕事を受注し、疎開も兼ねて息子の眞人もこっちで暮らせます」という流れだったのでしょうが、その間に眞人とナツコさんが会う機会があってもおかしくない、というか、無いと変な気がするんだけど…
ナツコさんがいつ「姉の旦那さんと結婚しよう」と決めたのか分かりませんが、あんなにシッカリとした感じの女性なのに、眞人と会わない内に妊娠してそのままなし崩し的に「これから新しいお母さんになるの、よろしくね」と言えるタイプと思えませんでした。
ただそこは男性主観のご都合主義なため、ナツコさんはただただ「甥の眞人さんは、急に新しいお母さんって言われても戸惑うわよね…頑張って気を遣ってあげないと」とだけ思っている様子。
他にもチラホラと気になるところはあります。
そこに触れる考察記事を2つくらい途中まで読みましたが、私が気になる点に触れていなかったり、解釈違いだったので、読むのを止めました。
「眞人が自分で頭を傷付けた理由」
とか書かれていましたが、それはプロのライターだろうが一般視聴者だろうが、何を想像してもその人の解釈次第になります。
私は「あー、田舎の子供達から嫌がらせされたから、ワザともっと大きな怪我をし、敢えて『転んだだけ』と言うことで、地元の子供達を悪者だと父親に思わせたかったんだな」とだけ受け取りました。
考察だと更に「継母への不満」とかも足されていたけど、まぁ理由なんて色々含まれているものでしょう。
基本的に眞人は年齢の割に大人びていて、達観したところのある子。
母の大叔父さんが頭が良過ぎておかしくなった、ということなので、眞人もかなり賢い設定みたいですね。
戦時中なのに、かなり裕福なおぼっちゃま故に、マザコンが故の不満のみに囚われて暮らしていられるご身分なわけですが、そこに共感し辛いと思ってしまいました。
ナツコさんはねー、本当に、宮崎駿作品らしい男のご都合主義に合わせた理想像みたいな女性よね。
大体ヒロインは美人で、機転がきき、物分かりが良く、優しくて我慢強く、行動力もある。
宮崎駿の年齢を考えたら、そういうものなのでしょう。
今回は眞人のことを「キレイな顔をしている」とハッキリとイケメンと位置付けるセリフがあったのは意外でした。
とはいえ「母親似」というセリフもあったので、やはり「眞人のお母さんは美人」=「お母さんにソックリの妹であるナツコさんも美人」=「眞人はイケメン」というのが繋がっている話。
結局のところ、美形のお母さんを理想的に思わせる設定の一部だと思います。
「かぐや姫の物語」とは相反する価値観ですね。
かぐや姫の物語 [DVD]
かぐや姫は、成長するに連れて自由さを失い、女らしい振る舞いを強制されることに嫌気がさしていた。
高畑勲の描く女性たちは、男の理想像に沿おうとはせず、自分らしさを追求する中で葛藤し、その上でありのままの自分を認めてくれる男性を好きになる印象があります。
一方、宮崎駿の描く女性たちは容姿も才能もあるけど、メインの主人公男性を引き立てる内助の功で魅力を発揮する傾向があるかなぁ。
それを「反フェミニズムだな」と私は捉えています。
眞人とナツコさんが行った下界は、いわゆる黄泉の国なのかなと思います。
HONKOWA愛読者の私からすると、ああいう死者が集まり、そこから生まれ変わる魂が集まるというのは、仏教的な価値観だなと思いました。
ただナツコさんの分娩室付近には幣束のような白い紙がたくさん飾られていて、その紙があの火事の日の炎のように眞人とナツコさんを巻き取ってしまう辺りの表現は、神道っぽさがありましたね。
ペリカンやインコが何を象徴としているのか、の解釈も揺れそうですが、インコに関してはパンフレットで「大衆の象徴」と明言されています。
戦時下ということを考えると、ペリカンは兵隊とか、戦争を引き起こす人達とか、そういう戦う側の象徴かな?
でもあくまでも私の独断と偏見ですが、「ペリカン=マスゴミ」「インコ=集団で騒ぎ、残酷なことも皆んなでやるなら何とも思わない、SNSで平気で他者を誹謗中傷する人たち」とも思えました。
じゃあ「青鷺は?」というと、コレは解釈が揺れそうです。
いつも嘘ばかりつく、覗き見している、平気で裏切るようで、友情も築ける存在。
メインビジュアルにもなっているからすごい鍵を握っていそうなキャラだけど、彼は使い魔なだけでもある。
自分の本心でもあり、無責任な他者でもありそう。
世界の均衡を保つ役割を担い、後継者を探している大叔父は…敢えて言うなら神に近い存在なのかもしれません。
インコの王様より上の立場でしたしね。
と、現実社会や、宗教観と照らし合わせていくと、色々なものに当てはめて考察は出来るでしょうけど…それする意味、あるかな?
帰りに子供が「結局、あの積み木が崩れたら世界がダメになるってこと?」と親御さんに聞いている声が耳に入ってきました。
そう、子供でも分かるそこがとりあえずポイントであって、それに対してアレコレと考察すると「善悪とは?」「死生観とは?」となり、テーマから外れていく気がします。
結局のところ、この映画のテーマは「男の子はお母さんが大好き」「戦争って良くないよね」の2つ。
たくさん英気を養って生まれていく前に、ペリカンに食べられてしまうワラワラ達。
可愛い無垢な存在のワラワラは、でも戦時中に生まれたら多くが命を落とすことになるでしょう。
ペリカンは悪役のようでもあり、意思疎通が出来る相手でもある。
とりあえず、大叔父さんが後継者として眞人を呼ぼうとしたこと、それをかつて神隠しに1年遭っていた幼少期の母が救ったこと、悪阻で冥府を彷徨いかけている継母を「父が好きな人だから助けないと」と眞人が救いに向かうことが大事、なはず。
ナツコさんはそこまで迎えに来た眞人を、危険だから帰らせようと「嫌い」と嘘をついて追い返そうとしていました。
ヒミ(眞人の母で、ナツコの姉)が話していた設定は、理解できる部分と、こうかな?と思う部分と、色々混ざっています。
石が持つ意味は、どの国のどの時代の話に合わせるか、あくまでもSFなのかで解釈が変わるかなぁ。
お墓と言われているのが石舞台古墳みたいだったのには、意味がありそう。
卑弥呼のヒミか、日を司るという意味でのヒミという名前なのか分かりませんが、あのナツコさんのいた分娩室に入ることが「禁忌」とされていた意味はよく分かりません。
しかし、私はそこを深く考察したいとも思わないのです。
青鷺が眞人をあちらに呼び込もうとした時のシーンは、とにかく蛙とか鯉とか集合体恐怖症には気持ち悪くて仕方ない絵面でしたね…
炎も紙も動物たちも、そういう「纏わりつく」「縛り上げる」等のシーンで使われていて、「生のしがらみ、辛さ」のように思えました。
まぁそんな大冒険を乗り換えたところで、眞人が何をなし得たかと言えば
「継母のナツコさんを、新しいおかあさんとして受け入れ、その後生まれた弟も含めて家族となり、戦後2年経って東京にまた戻っていくことになる」
というだけのお話。
上映後に後方の女の子が「割と面白かったー」と言っていましたが、うん、アニメーションとしては面白い演出や絵がたくさんありました。
先日マフィア梶田が「ジブリの映画をちゃんと見直すと、無駄な描写が一切ないと気付いた」と話していましたが、確かにそうだなと思いました。
セリフにしなくても、目の動きなどの表情、仕草でその時のキャラの気持ちを察することが出来ます。
これは昨今のながら見が当然という状況では、見逃すことが多いかもしれませんね。
そういう意味では、テレビより映画館で観たほうが良いかも?
ただ、「こういう設定だ、こういうシーンだ、と伝える分には過不足がない描写がされているけれど、そもそもその設定やエピソードを入れる必要があるか?と言えば、前半ダラダラして感じたし、省ける部分と膨らませる部分の緩急に差があり過ぎた」とは思いますけどね。
うーん、自分でつらつらと書いていても、消化不良というよりも「…だから?」感がやはり残ってはいます。
とにかく、宮崎駿が子供の頃から好きだったものを詰め込んだ、という意味で自叙伝なのでしょうか?
夢と現の境が曖昧で、人の好意と悪意が混在していて、その中でも凛とした自我を捨てずに進みたいと願う少年の冒険譚は、宮崎駿が好きそう。
この映画を観て「良かった、感動した」と思う人もいると思うし、私のように「うーん、いつも通り大団円っぽくしてるけど、納得いかない部分もあるな」という人もいるし、他の感想を抱く人もいるでしょう。
考察勢もきっと色々いるし、インタビュー記事を読んで知ることも多いかもしれない。
私は…高畑勲展でも言われていた「アニメーションだからこそ出来る動き」というのが観られて良かった、と思っています。
物理的に絶対ムリな動きを、ギュッと体を突っ込んでプリンって抜け出したりする、あのディズニーっぽさにも通じる昔ながらの動きって、良いですよね。
昨今の「背景は写真のようなのに、人物はのっぺりしている」というアニメあるあるも、ジブリの水彩タッチっぽい絵だとそんなに気にならない部分がある。(今回はちょっと違和感のあるシーンもありましたが…)
この映画を観て「自分自身でどう生きるか決めていけるんだ!」と前向きなメッセージを受け取れた若者は、良いなぁと思います。
「自分ではどうしようもない社会情勢、他人の好意や悪意に触れていき、振り回されることもあるけれど、善悪の基準をキチンと手放さずに生を全うしよう」
それは宮崎駿が今まで散々言ってきていたことなのでは?
それに伴い、争いや環境破壊も起きる。
人間が生きていく上では、理想だけ追求していけるわけでもない。
戦争は嫌いだけど、戦闘機は好きとか、自立した女性は好きだけどそういう人に男として支えてもらいたい、とか、宮崎駿の好みも相変わらず詰まっていたと思います。
今の世の中にはイマイチ合っていない、と私は思うけど(ロシアとウクライナの状況とか、インフレとか、コロナとかで騒ぐ状況で観るには、主人公の悩みが小さすぎるように思える)、一見身近なようで深い世の理を描いていると受け取る人もいるでしょう。
判断は人それぞれ。
私は誰かとこの映画の解釈について話す気は無いけど、「あのシーンの動きや絵、配色が良かったね」は友達と語ってみたいなと思います。
もうすでに上映している映画館も減っていますが、ファーストデーはほとんどの席が埋まるくらいの人気ではありました。
まだ観ていない方は、タイミングが合えば記念に観てみてはいかがでしょうか?
HONKOWA愛読者の私からすると、ああいう死者が集まり、そこから生まれ変わる魂が集まるというのは、仏教的な価値観だなと思いました。
ただナツコさんの分娩室付近には幣束のような白い紙がたくさん飾られていて、その紙があの火事の日の炎のように眞人とナツコさんを巻き取ってしまう辺りの表現は、神道っぽさがありましたね。
ペリカンやインコが何を象徴としているのか、の解釈も揺れそうですが、インコに関してはパンフレットで「大衆の象徴」と明言されています。
戦時下ということを考えると、ペリカンは兵隊とか、戦争を引き起こす人達とか、そういう戦う側の象徴かな?
でもあくまでも私の独断と偏見ですが、「ペリカン=マスゴミ」「インコ=集団で騒ぎ、残酷なことも皆んなでやるなら何とも思わない、SNSで平気で他者を誹謗中傷する人たち」とも思えました。
じゃあ「青鷺は?」というと、コレは解釈が揺れそうです。
いつも嘘ばかりつく、覗き見している、平気で裏切るようで、友情も築ける存在。
メインビジュアルにもなっているからすごい鍵を握っていそうなキャラだけど、彼は使い魔なだけでもある。
自分の本心でもあり、無責任な他者でもありそう。
世界の均衡を保つ役割を担い、後継者を探している大叔父は…敢えて言うなら神に近い存在なのかもしれません。
インコの王様より上の立場でしたしね。
と、現実社会や、宗教観と照らし合わせていくと、色々なものに当てはめて考察は出来るでしょうけど…それする意味、あるかな?
帰りに子供が「結局、あの積み木が崩れたら世界がダメになるってこと?」と親御さんに聞いている声が耳に入ってきました。
そう、子供でも分かるそこがとりあえずポイントであって、それに対してアレコレと考察すると「善悪とは?」「死生観とは?」となり、テーマから外れていく気がします。
結局のところ、この映画のテーマは「男の子はお母さんが大好き」「戦争って良くないよね」の2つ。
たくさん英気を養って生まれていく前に、ペリカンに食べられてしまうワラワラ達。
可愛い無垢な存在のワラワラは、でも戦時中に生まれたら多くが命を落とすことになるでしょう。
ペリカンは悪役のようでもあり、意思疎通が出来る相手でもある。
とりあえず、大叔父さんが後継者として眞人を呼ぼうとしたこと、それをかつて神隠しに1年遭っていた幼少期の母が救ったこと、悪阻で冥府を彷徨いかけている継母を「父が好きな人だから助けないと」と眞人が救いに向かうことが大事、なはず。
ナツコさんはそこまで迎えに来た眞人を、危険だから帰らせようと「嫌い」と嘘をついて追い返そうとしていました。
ヒミ(眞人の母で、ナツコの姉)が話していた設定は、理解できる部分と、こうかな?と思う部分と、色々混ざっています。
石が持つ意味は、どの国のどの時代の話に合わせるか、あくまでもSFなのかで解釈が変わるかなぁ。
お墓と言われているのが石舞台古墳みたいだったのには、意味がありそう。
卑弥呼のヒミか、日を司るという意味でのヒミという名前なのか分かりませんが、あのナツコさんのいた分娩室に入ることが「禁忌」とされていた意味はよく分かりません。
しかし、私はそこを深く考察したいとも思わないのです。
青鷺が眞人をあちらに呼び込もうとした時のシーンは、とにかく蛙とか鯉とか集合体恐怖症には気持ち悪くて仕方ない絵面でしたね…
炎も紙も動物たちも、そういう「纏わりつく」「縛り上げる」等のシーンで使われていて、「生のしがらみ、辛さ」のように思えました。
まぁそんな大冒険を乗り換えたところで、眞人が何をなし得たかと言えば
「継母のナツコさんを、新しいおかあさんとして受け入れ、その後生まれた弟も含めて家族となり、戦後2年経って東京にまた戻っていくことになる」
というだけのお話。
上映後に後方の女の子が「割と面白かったー」と言っていましたが、うん、アニメーションとしては面白い演出や絵がたくさんありました。
先日マフィア梶田が「ジブリの映画をちゃんと見直すと、無駄な描写が一切ないと気付いた」と話していましたが、確かにそうだなと思いました。
セリフにしなくても、目の動きなどの表情、仕草でその時のキャラの気持ちを察することが出来ます。
これは昨今のながら見が当然という状況では、見逃すことが多いかもしれませんね。
そういう意味では、テレビより映画館で観たほうが良いかも?
ただ、「こういう設定だ、こういうシーンだ、と伝える分には過不足がない描写がされているけれど、そもそもその設定やエピソードを入れる必要があるか?と言えば、前半ダラダラして感じたし、省ける部分と膨らませる部分の緩急に差があり過ぎた」とは思いますけどね。
うーん、自分でつらつらと書いていても、消化不良というよりも「…だから?」感がやはり残ってはいます。
とにかく、宮崎駿が子供の頃から好きだったものを詰め込んだ、という意味で自叙伝なのでしょうか?
夢と現の境が曖昧で、人の好意と悪意が混在していて、その中でも凛とした自我を捨てずに進みたいと願う少年の冒険譚は、宮崎駿が好きそう。
この映画を観て「良かった、感動した」と思う人もいると思うし、私のように「うーん、いつも通り大団円っぽくしてるけど、納得いかない部分もあるな」という人もいるし、他の感想を抱く人もいるでしょう。
考察勢もきっと色々いるし、インタビュー記事を読んで知ることも多いかもしれない。
私は…高畑勲展でも言われていた「アニメーションだからこそ出来る動き」というのが観られて良かった、と思っています。
物理的に絶対ムリな動きを、ギュッと体を突っ込んでプリンって抜け出したりする、あのディズニーっぽさにも通じる昔ながらの動きって、良いですよね。
昨今の「背景は写真のようなのに、人物はのっぺりしている」というアニメあるあるも、ジブリの水彩タッチっぽい絵だとそんなに気にならない部分がある。(今回はちょっと違和感のあるシーンもありましたが…)
この映画を観て「自分自身でどう生きるか決めていけるんだ!」と前向きなメッセージを受け取れた若者は、良いなぁと思います。
「自分ではどうしようもない社会情勢、他人の好意や悪意に触れていき、振り回されることもあるけれど、善悪の基準をキチンと手放さずに生を全うしよう」
それは宮崎駿が今まで散々言ってきていたことなのでは?
それに伴い、争いや環境破壊も起きる。
人間が生きていく上では、理想だけ追求していけるわけでもない。
戦争は嫌いだけど、戦闘機は好きとか、自立した女性は好きだけどそういう人に男として支えてもらいたい、とか、宮崎駿の好みも相変わらず詰まっていたと思います。
今の世の中にはイマイチ合っていない、と私は思うけど(ロシアとウクライナの状況とか、インフレとか、コロナとかで騒ぐ状況で観るには、主人公の悩みが小さすぎるように思える)、一見身近なようで深い世の理を描いていると受け取る人もいるでしょう。
判断は人それぞれ。
私は誰かとこの映画の解釈について話す気は無いけど、「あのシーンの動きや絵、配色が良かったね」は友達と語ってみたいなと思います。
もうすでに上映している映画館も減っていますが、ファーストデーはほとんどの席が埋まるくらいの人気ではありました。
まだ観ていない方は、タイミングが合えば記念に観てみてはいかがでしょうか?
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宮崎駿はどう生きるか?
私は公開初日に見ました
ここまでネタバレ無しにジブリ作品を見ることが出来るというのは何だか貴重な体験に思ったので
キャラ絵も何もない時に見たのである意味ドキドキでした
私は普通にナウシカ、ラピュタ、もののけ姫あたりが好きな人間です
千と千尋以降はストーリー性はあまりって印象でアニメーションや感覚的に楽しむって感じに思います
ハウルも原作改変が…
風立ちぬはそれこそヒロインがちょっと苦手でした
あと庵野さんの演技が酷すぎてしんどかったです
君生きはやりたいことはわかるけど
やり方が良くない部分があると思いました
色々考察やわからないところはあるけれど、それが何に繋がっていくのか?というのは感じました
あと現実世界のパートが長く感じました
東京は普通に父方の家だと思ってました
大きな事業をしているし、使用人や親族もいたのかと思いました
2年後には地方に新しい工場があって、息子だけ呼んだのだとあまり疑問には思いませんでした
あとアオサギのモデルは鈴木さんだとは結構言われていましたね
私はなんの情報もなく初日に見に行ったので菅田将暉に気づかないでビックリしました
でも映画館の大画面でアニメーションが見られたのは良かったかなと思います
トップコートは元々ジブリと縁があります
業務提携している尾上菊之助さんは歌舞伎でナウシカ役を演じたりしてます
確か鈴木さんとチーフマネージャーが食事する場面があったような気がします
エンディングクレジットにはそうそうたるアニメーターや制作会社が載っていて
ある意味凄いなと思いました
(エヴァの映画から本田さんを引き抜いてきたぐらいですしね)