LGBTQ(多様性)が普通になると、BLや百合のインモラルな楽しみは無くなる?~「25時、赤坂で」ネタバレ感想
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絵もキレイだし、評判も良いみたい。
内容としては、敢えて例えるなら「おっさんずラブ」や「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)」の俳優さん同士が実際に私生活で付き合っていたら?というような内容、かな。
まぁ設定自体はもちろん違い、主人公の駆け出し若手俳優がイケメン俳優とゲイカップル設定のドラマに出演し、まではドラマっぽいけど、この2人は実は同じ大学の映像研究会で先輩後輩の関係で、イケメン俳優の方はその頃後輩の彼から言われた言葉が心に残っていて…という過去があります。
で、eBookJapanの70%オフ(最大500円まで値引き)クーポンがあったので、とりあえず2巻まで読んでみました。
うーん…うーん…
面白く無くはない。
ただ、私が最近のBLをあまり読もうと思わないのは、こういう「同性愛に対して、登場人物達がほとんど抵抗感を持っていない」というか、作品内に同性カップルが普通にたくさん出てくるところにある、かも…
この手の作品は昔からあって、確かよしながふみの対談集の中でも「一億総ホモ」みたいな言葉で「男子校内の生徒たちはカップルだらけ」という設定はありました。
私が読んだものだと「タクミくんシリーズ」がそうですね。
あれはラストが…えぇ?という感じでしたが…
そもそも主人公は過去に兄から性的虐待を受けていた接触恐怖症設定から始まり、実は幼少期から彼に片思いしていた王子様みたいな完璧イケメン御曹司からグイグイ迫られて付き合う、から始まっていたけど、その後は学園内やら友達関係も皆んなゲイカップルだらけとなり、ファンはその中でもどの組み合わせが好きか?を楽しんでいた記憶があります。
ただ、親へのカミングアウトとか、やっぱり皆んなに知られたらいけない、とか、葛藤も描かれてました。
最近のBLでも、多少なり周囲に隠れて付き合う、的な部分はあるだろうと思います。
最近人気のものだと、先月完結した「ギヴン」は知人から借りて読みました。
ギヴン(1) (ディアプラス・コミックス) Kindle版
面白い、けど、あれもやはり登場人物達が次々とゲイカップルになっていってます。
ここで難しいのは、私はリアルなLGBTQ+に関しては、やはり差別はいけないというか、そういう方々は普通によくいる存在であり、男女の恋愛と変わらない組み合わせと思っているところ。
でも、創作物だと、やはりまだ男女の恋愛ものとは別と思っているんですね。
以前山手線内で、BLマンガがいかに良いかを男性同僚に熱く語っている若い女性が目の前に立っていて
「おおぅ、そんな時代になりましたかっ」
と驚いたことがあります。
その手の人がBLにハマるのは、
「障害がある関係性なのに、惹かれあってしまう切なさ、純粋さ」
が目当てだったり
「男女間のアダルトなシーンよりも、客観的に見られるから余計に興奮する」
みたいな部分なのでは?
なんて言うか「適齢期だから、子供が欲しいから、親の手前、周囲の手前、結婚する」という打算ではなく、純粋に相手を人として惹かれていく感じが良いケースもあります。
元々同性愛者だった設定もありますけど。
でもそこを楽しむということは、やはりどこか「ファンタジーの中のインモラル」を楽しんでいる、ということでもあるんですよね。
近親相姦を実際にしたいとは思わないけど、創作物として読むのはツボ、とか。
まぁこの手の議論は色々既になされていることだろうと思います。
彼氏のいない女性にとって、男女間の恋愛話は何て言うか、読んでいて胃が痛くなるというか、「私このままで良いの?」みたいな、追い詰められる気になるケースもある。
でもBLなら、純粋に他人事として楽しめる。
ちなみに、私の友人でレズビアンのアメリカ人女性は、百合系のマンガも大好きです。
ハード系もソフト系も読むし、百合ジャンル好きが集まるSNSもチェックしているとか。
ただ、彼女が自分で書く小説は、某少年マンガのBLとのこと。
彼女は日本に住んでいた時
「日本の創作物には百合作品がたくさんあるのに、街中に全然百合カップルがいないし、レズビアンと公言すると微妙な態度を取られた」
ということにショックを受けていました。
まぁ確かにレズビアンカップルはあまり分かりやすくベタベタしてないよなぁ、と思っていたのですが、先日会社帰りに
「あ、この女性2人、カップルだよね?」
という方々を初めて見かけて、ちょっと驚きました。
2人ともハイヒールを履いてスーツを着ていたんですが、1人はショートヘアにパンツ、1人はロングヘアにスカート。
で、ショートカットの方のポケットの中で2人は手を繋ぎ、寄り添い合いながら歩いてました。
男女だとしても「おいおい、仕事帰りにあからさまだね?」とは思う密着度でしたが、でも手を繋いで帰る社会人カップルは朝晩共によく見かけます。
だから、それと同じ感覚なんだよな、そりゃそうか、と思いましたが、東京23区内とは言えやはり珍しいなとまだ思ってしまう私もいます。
ゲイカップルだと、偶に家の近所のコンビニ脇でキスしてるおじさん2人を見かけますが、「それはさすがに、男女でも止めて?」と思うかな…
電車内で片方の肩に頭を乗せて甘えてるゲイカップル、も見たことあったっけ。
まぁ、私の記憶に残る程度に、まだまだ多くはありません。
現実問題としては、LGBTQ+の方々が肩身の狭い思いをしない世の中であって欲しい。
でも、創作物だとまだ「インモラルさ」を求めてしまう…
これは相反する価値観のため、私の中に矛盾があるなと気付きました。
最近はもう男女の恋愛ものもファンタジー感覚で読んでいるので、幼馴染ものジャンルとか好きです。
「花に染む」も「1日2回」も好き。

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これもまた、私の中では幼馴染というのがファンタジーに近いからでしょう。
兄弟、兄妹、姉弟が仲良い話も好き。
でも、姉妹ものはそこまで興味ないかな…
百合ものも、そこまで好んで読みません。
30代の頃は「東京タラレバ娘」とかハマってたけど、それは参考書気分だったこともあり、今となってはご都合主義な展開に飽きて手放しました。
現実の自分とは違う、縁のない世界を創作物では楽しみたい。
なろう系とかのファンタジーは興味ないから、心の機微を描いてる作品が好き、というのは一貫しているのかなと自己分析しています。
最近のBLマンガは、何かこう…出会ってすぐ関係もって、とりあえずハードなシーンも盛り込んでおけば良い、というのが私がハマらない理由かも?
「今年人気のBL作品」みたいなラベルが付いてるのを試し読みすると、「やっぱりソレかぁ」となることが多い、というか、あまり絵も好みじゃないのが多いかなぁ。
よしながふみとか、今市子とか、雁須磨子のBLだと、恋愛以外の心の機微や設定やストーリーの面白さがベースとしてあるから、あくまでもBL関係はスパイスくらいなんですよね。
男女間なら単なる下手な恋愛話が、ただ同性同士になってるだけ、だと食指が動きません。
が、LGBTQ+が普通の世界になるってことは、そもそもBLとか百合という区分け自体無くなることでもある、のでしょうか?
なので「25時、赤坂で」の場合は、せめてもと売れっ子俳優が主人公というところで、ファンタジーを感じられるのかもしれない。
それはそれで、少女マンガから王道過ぎる設定なんですけどね…
BLも飽和状態だから、今は色んな組み合わせがあるにはあるのでしょう。
ネコと思ってたキャラがタチだった、とかもあるし。
じゃ、そういう創作物と、マツコ・デラックスとかIKKOさんを重ね合わせるか?というと、それとこれは別問題。
美輪明宏ならファンタジーを感じますが…
実際問題、BL実写ドラマは女性人気ありますけど、結局ほとんどの視聴者は
「カッコいいイケメンキャラの、純愛ラブストーリーを観てキュンキュンしたい!」
という、ハーレクイン的なノリがある気もします。
そこは私、あまり共感出来ません。
それをキッカケに、LGBTQ+への偏見が無くなるなら良いと思いますが。
「あー、この2人が正式に結婚出来る世界、現実でも起きて欲しい」とか
「この2人を白い目で見る脇役はムカつく」とか
そう思うことで、現実の価値観が変わる人もいるかもしれないし。
ただ、それはそれで喜ばしいことだけど、隠れてコソッとBLや百合を読んで楽しむ背徳感は無くなりますね。
現実の社会問題と照らし合わせると、かつてBL作品の中でも問題視されていた男性教師から男子生徒へのセクハラ、とかは、ニュース報道されることが増えました。
私はその被害者がどんな風に苦しんでいるのか、近い設定のBLマンガで読んだシーンと照らし合わせて考え、憤ります。
元々、BLや百合は「多様性を社会に訴えよう」という意図で描かれてきてはいません。
よしながふみの「大奥」も、ドラマだけ観た人、他作品を知らない人は、「まーた多様性のゴリ押しかよ」と思ったりするみたいですが、彼女はずっと前から「女性の自立」「同性愛」について描いてきていて、しかもエッセイマンガの中では
「自分はずっと、嘘ゲイのマンガを描いて飯を食ってきた」
という罪悪感を、同性愛者の男友達に謝罪する気持ちでお寿司をご馳走するエピソードもあったため、現実と創作物とのギャップについてかなり前から考えてきている方でもあります。
私はまだ、その境地に至っていないんだなぁ、と「25時、赤坂で」を読んで思いました。
いや、むしろこの作者もそうなんじゃない?
3巻以後を読むかはまだ検討中です。
なんかなー主人公が何でそこまで一気に恋愛感情を持つようになるのか、の経緯が安易にも見えるのよねぇ。
少年マンガの中の、男にとって都合の良い女の子みたいな思考回路に見えてしまって…
完璧なイケメンキャラのタチとかもさぁ…
「花に染む」は男女の純愛だけど、あれはもう、「今まで色々描いてきたマンガの中で、特に理想を詰め込んだ王子様キャラとして陽大を描きました」と公言されているから、納得出来るんです。
あと、陽大は傍目には王子様キャラに見えるけど、素の部分はトラウマによる酷い面もあるしね。
テーマ自体は重いから、話として感動出来ました。(繰り返しますが、最近再読するまでは、作品のテーマを私は理解出来ていませんでしたが…)

圓城陽大(くらもちふさこ「駅から5分」「花に染む」)再考察ネタバレ感想
私の中に定期的に「くらもちふさこ熱」がやってきます。彼女の漫画はほぼほぼ全て読んでいて(但し「ポケットにショパン」頃より古いのは読んでません)、単行本や文庫版で集めていましたが、引っ越しのタイミング等で捨ててしまい、その後改めて電子書籍で買い直していました。でも「駅から5分」と「花に染む」は読み終えてからあまり時間が経っていない感覚だったので、まだ電子書籍を買っていなかったんです。駅から5分 1【電子...
今市子のBLは、ギャグが多くて面白い、というのも面白くて好き。
でも、安易にBLや百合設定にしている作品は、やはり濡れ場とかインモラルさがツボな人らをターゲットにしていそうで、抵抗感がある、かな。
まぁ「多様性」と言っても、過去の価値観と法的な問題の線引きはやはり必要とは思います。
だからって、「生徒と教師の恋愛ものはダメ!条例違反!」とまでは私は思いませんが。
この辺り、まだ私の中でも揺れている部分ですね。
あくまでも「創作物」として楽しむ上で、LGBTQ+だけに焦点を当てるのは違うのかな、と思いつつ、それがスパイスになっていれば萌える!
その点、水城せとなの「同棲愛」はいまだに結構好き。

水城せとなのBLマンガ「同棲愛」ネタバレ感想1〜杉浦椿〜
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男しか好きになれない、男も女も好きになれる、ネコしかダメ、タチしかダメ、どっちもアリ、でもあくまでも友人であり続けることを選ぶ、等など色んなパターンが出てくるし。
上手くまだ私の中で頭の整理が出来ていませんが、創作物としてBLを楽しみたい私と、現実のLGBTQ+を特別視しないことの整合性を、そろそろ擦り合わせる時期が来ているのかもしれませんね。
それでも…やっぱり、同性という障壁を越えるくらい、人として相手のことを好きになる、というのが好きだなぁ。
それは、今まで異性と見ていなかった相手に惹かれる男女の話でも同じかもしれません。
私の身にその手のケースは…多分訪れませんけどね…
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