「くらもち花伝」を元に「花に染む」の陽大と花乃と楼良と雛の「運命」を再考察

2022年05月23日
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「花に染む」のことを、まだまだ考えていて、「くらもち花伝」を買って読んで、それで知ったことを過去記事に追記して…を続けていたのですが、それから更にまた何度も読み返す内に、

「あれ?キレイにまとまって終わってるって思っていたけど、やっぱり腑に落ちないな…?」

と思うことが出てきてしまいました。


くらもち花伝 メガネさんのひとりごと

陽大と花乃がこの後結ばれるんじゃないかなぁ、分からないけど…でもインタビューで作者は「花乃ファンも楼良ファンもちょっとガッカリするその後が自分の中にはある」と言われていて、どういうことかなぁとは思っていたんです。

そこで「じゃあ、雛と陽大が一緒になるってこと?」と思うか、というと、それもまた違う気がするのです。

だってその場合は、「どちらのファンも『ちょっと』ガッカリする」ではなくて「ガッカリする」になると思うから。

となると、花乃も楼良も、陽大以外の人と幸せになる、という可能性もあります。

まぁ二人が好きなのは陽大でも、他の人とでも幸せになってくれたら、それはそれで悪い話では無い。

が、やっぱりそれはそれで腑に落ちない…。

「楼良は陽大から頼み事をされた時点で、陽大は花乃のことを一番に考えているのを知っていた」というのは明らかです。

それでもなお、あくまでも花乃は「親友を超えた大切な人」であり、恋愛面の勝者は楼良、と解釈している人もいます。

しかし…そもそも花乃自身は、背中に陽大の存在を感じながら三人立ちをやりたかったのでしょうか?

花乃は、お世話になった雛のために、彼女の願いである花乃・楼良・雛で南関東大会の時のような三人立ちを実現しようとしていました。

陽大と再会させてくれて、早気を治すキッカケを作ってくれた雛に報いたい、そしてそれを影で後押ししていた陽大の気持ちに応えたい、と思っていたからです。

それが花乃自身の夢にもなり、病院で無理してでも「雛さんのお陰で弓がまた引けるようになったから試合に出たい!」と強く言う花乃を見る陽大の表情は、それまでにニヤニヤした笑顔が消えて空虚さを感じるようなものに変わっています。

じゃあ、花乃自身の個人的な願いはなんだったのでしょうか?

そこはやはり子供の頃から陽大に思っていた「ずっとこの子を見ていたい」や事件後の「見守っていきたい」という気持ち。

ただ入谷や楼良が現れたことにより、花乃の中に「陽大を神格化していたけど、でも一番の親友は自分じゃないかもしれないし、他の女性と一緒にいても丸ごと守る、という気持ちで側にいるのはキツイ」と気付きます。

で、三人立ちをやった後に、陽大に「うれしいけど、悔しい。ずっとなりたかった陽大に水野がなっていた」と泣く。

この、陽大が「楼良に自分の体配を教え込んだら、花乃が喜んでくれる」という意図が分からなくなってきました。

だって、花染体育館で背中に陽大がいる状況の中、花乃は弓を引いています。

2人で練習した時にそれは出来ていました。

その後坊野の新保の願いで三人立ちをやりたいと頼まれた際には、自分たちの聖域に入り込まれるようで嫌だ、と言えないまま受け入れ、それを察した陽大が嘘をついてやらなくて済むようにし、感謝していた…

…ということは、花乃の願いは、陽大の前で弓を引ければ良い、というだけではなかった。

本当の願いは、陽大の側にいることと、助けられなかった兄と陽大と自分の三人でもう一度三人立ちをやりたい、ということ。

しかし、これって花乃・陽大・雛で三人立ちを体育館で出来れば良かったんじゃないの?

もちろん後半まで陽大は雛を許せないままなので、楼良が陽大の代わりをし、それをキッカケに陽大も過去を受け入れられるようになるところが感動的なラストなのですが…

でも何故陽大は「水野に俺の体配を徹底的に身に付けさせたら、花乃が驚いて笑ってくれ、全てが終わらせられる」と思うのか分からなくなってきたんです。

シンプルに「陽大は花乃のことがずっと好きだった」という結論に飛びつくのが早急に感じてきました。


「くらもち花伝」では、他作品の解説と共に、「花に染む」のエピソードや作画の裏話、物語の大筋には関係無いけど作者なりに拘ったコマについて書かれていました。

流鏑馬の話を直接聞きたかった、と川辺で花乃と陽大が話すシーンは、立て掛けた二人の弓が寄り添い合っていて、その絵で当人同士がベタベタしていなくても関係性を表現出来ると思ったとのこと。

私はそこを読んだ時点では「あーベタベタという表現を使うということは、やはり二人は恋愛関係」と思ったんです。

こういうのは「物語としては重要ではないけど、物に託した表現、裏設定」と言っていましたが、それでも振り返った時に「ベタベタ」と言う言葉を使うということは、男女間のイメージなのかなと解釈しました。

そして「友情を超えた神聖な領域にいる関係性」というのは、陽大と入谷なのだそうです。

何度も読み返すと、子供の頃から一貫して陽大は花乃に積極的にくっ付いていて、それは再会しても変わりません。

陽大目線で見て、「お前どんだけ花乃のこと好きなんだよっ!」とツッコミ入れている方々もいます。

コレは陽向兄も気付いていたように思えました。

●誰かが触ると怒る弓を、陽大がいきなり花乃に触らせようとした。

兄は腕組みをして「ふぅん?」というような顔をしています。

●備品の弓を壊したペナルティでしばらくゴム弓と陽向に言われて落ち込む花乃に、陽大が自分の使っていた弓を貸す。

兄は「やれやれ、陽大は花乃に甘いなぁ」というような呆れ笑顔をしています。

●「馬を見せたいから」と花乃の帰りを外で待ち、満面の笑みで手を振る陽大を見て、照れくさそうな花乃。

兄は口元に拳を当て、横目に花乃の表情を真顔で探るように見ています。

●初めての三人立ち(合宿前の石ノ川中学の女子チームとの対抗戦)で上手く弓を射れて喜びのあまり陽大に抱きつく花乃。

兄は真顔で二人を見た後に、陽大から弓を受け取り自分と弟の弓を片付けています。

●合宿のがまん大会中の夜、暗闇で抱き合う陽大と花乃の様子を皆んなが「ここ男部屋なのに変だろ」と言う。

兄は呆れ顔で電気を点けています。


この流れからして、兄は「陽大と花乃は親友」というだけでは無いと思っていたのでは?

普通に考えると、1歳差の3人は兄弟+幼馴染。(同じ学校に通うお隣さんなのに、10年以上顔を合わせていないのは謎ですが)

で、仲良くなった時点で花乃は6年生の春、「僕の親友」発言は1年後、事件は中2の秋、なので圓城兄弟と共に倭舞で過ごした時間は2年半となります。

花乃が弓道を始めるのは中学入学から。

なので中1で部活をやっている陽向は帰りが遅いから、まだ小6の花乃と小5の陽大は放課後よく一緒に遊ぶようになり、その上で花乃が弓道を始めた。

陽大が中学に上がるまでの1年間は、兄と花乃は同じ部活の先輩後輩となるため、陽大は普通ならちびっ子扱い枠になるところでしょう。

兄と花乃が一緒に合宿行ってる間とか、絶対寂しかったろうなぁ。

「弓道以外は、全部兄が優先」という状況の中で、「僕の方が先に仲良くなった、僕だけの親友」というのが花乃だったんだろうと思います。

花乃が6年生の時に一気に家族ぐるみで仲良くなり、陽大のお母さんは中学生になった花乃に巫女修行をしようとしていました。

陽向の上に挙げたシーンの表情を思うと、小学生の時から友達の田路達と、1歳上の女の子の花乃で態度が違う弟、おや?と思いそうではありますね。

本来なら倭舞を切り捨てたい、だから田路と再会した時には突き離した陽大。

なのに、花乃には「送ること自体が未練だろ」と思っていたメールを送り、雛に連れられて会いに来た花乃をそっと線路沿いから見送ろうとし、リターンしてきた花乃の手を握って「倭舞だ」と言いました。

本来なら花乃こそ、倭舞と家族を思い出させる存在のはずなのに、仮想世界を始める前から繋がり続けたのは…愛情なんでしょうか?


さて「ミステリアスな青年」という設定の陽大を描くために、くらもちふさこは「語り部」として花乃を主人公としたけれど、花乃は弓道向きな動じないタイプのため、お話の構成にかなり苦労したとのことでした。

よしながふみの「フラワーオブライフ」で、「何を考えているか分からない女の子」のマンガを描こうとした主人公たちが、同級生から

「何を考えているか分からないタイプ、ということが分かる描写が無く、ただ何も話さないだけだと、そもそもどういうキャラクターか分からない」と言われるエピソードがありました。

そういう意味では、陽大は「何を考えているか分からない」と思わせる言動が多々あります。

花乃派と楼良派が口論状態になっていた匿名掲示板等読みましたが、楼良派の意見の中に

「自分だったら、という目線で物語は読むものだから、その上で陽大は楼良を選んだと解釈した」

と言う人がいました。

しかし、「自分のことではなく、他人のことを考える想像力を持って欲しい。読者にはそれがあるはず」と思って作者は描いたそうです。

これがまた…楼良以外は思っていることと想像を交えて話しているため、本当に解釈が人によって変わる!

なので読者としては楼良は分かりやすく感情移入しやすく、可愛く、健気で頑張り屋さんで、応援したくなる女の子だったと思います。

一方の花乃は常に仏頂面で、そこがダメだと言う意見もありました。

個人的には、この仏頂面が変わる瞬間が時々ある、というのがポイントなんだと思うのですが…

「いいな、花乃はうるさくなくて」

と陽大に言われるくらい、花乃は疑問に思うことがあっても質問せずに悶々としたりします。

そのためミスリードが多く、花乃の想像を鵜呑みにすると振り回されてしまいますね。


それに加えて雛もそういう部分があり、以前読んでいた時には「雛は怖い人」という印象がありました。

改めて何度も読み返すと、陽大が言うように「雛の願いは何でも叶う星回りで、抗おうとしても抗おうとしても、その人の思う通りに自分が動くことになる」というような怖さとウザさが消えていき、優しい人に思えてきました。

この「運命」というものは、くらもちふさこのマンガの中ではポイントだそうです。

人は出会うべくして、必要な時に必要な人と出会う。

陽大は雛を「自分に決められた運命の人」と思っていて、「周囲は皆んな彼女の応援をするし、いつかは自分も…」と楼良に言っています。

一般的には「運命の人」というのは「将来一緒になる人」というイメージがありますよね?

そこだけ切り取ると陽大は「自分は最終的には雛の願いどおりに、一緒に花染神社を継いでいくことになるのではないか」と思っているように受け取れます。

雛は「頑張らないと、陽大に花染神社を乗っ取られる」と思っているのが後半に分かりますが。

陽大は「雛は自分と花乃を引き合わせようとしている。そしてそれは倭舞の過去を忘れさせたくないため」と思い込んでいました。

この法則で行くならば、雛の手引で再会した花乃と一緒に居続けることは、陽大の新たに作ろうとした仮想世界とも合わないし、雛の思い通りにことが運んでいることになってしまいますよね?

仮想世界が始まる前の時点で、もう自宅に呼んでるし、合鍵まで準備していた。

アパートの管理用の合鍵は雛が持っていたので、花乃に渡したのはそれとは別に用意したものってことになりますし。

雛がアパートの空き室に花乃を住まわせようとしているのも、最初は隠そうとしたのに結局笑顔で花乃に「良かったな」と言って受け入れ、「本当は迷惑じゃないのかなぁ」と思う花乃に連絡しまくります。

陽大にとって、本来なら弓道さえも倭舞を思い出させるものだけれど、それは止められなかったのでしょう。

それと同じように、花乃のことも手放すことが出来なかった。

花乃よりも付き合いが長い田路たちのことも、亡くなった家族たちのことも忘れようといているのに、花乃だけは特別。

雛と伯父には「過去は捨てた」と言いながら、その隣に花乃を置くのは筋が通らないけどね?
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さて楼良と付き合うことになったのも、雛の策略です。

雛は個人的に楼良を気にいる部分があり、なおかつ自身と花乃で弓道を教えることにより花乃の早気を治すキッカケとし、そして三人立ち再現のメンバーにした。

これは楼良が最後に気付く「雛の望む方向に、陽大が自主的に動いている」の象徴でもあります。

そもそも…花乃が早気になったのは…陽大の射を見た後なんだけどね…

で、早気になってしまった自分を3年後に陽大に見せ、それをそのまま受け入れられたことで、やっぱり弓道をもう一度やろうと決心できた。

陽大が本当に花乃のことを女性として好きだった場合、筋が通らない部分はあります。

楼良にキスをしたのは、まぁくらもち男子は本命以外にもキス出来るからね、で納得。

でも雛と花乃が、陽大のことを好きな楼良と付き合わせるために手を組んだ、というのは、本来なら物凄く嫌なことのはず。

花乃は陰で雛と協力したことがバレたら絶交されるんじゃないか?と思っていたのに、むしろ陽大は機嫌が良くなっていた。

これは「花乃の早気が治った」というのが一番嬉しいことで、それに楼良と自分が利用されて功を奏したのなら役に立てたようなものなので問題なし、ということなのでしょうか?

陽大の花乃へのスタンスは「何があっても受け入れる」です。

だから、料理学校に通っていること、弓道を止めたこと、浪人して大学合格したこと、を直ぐに教えてもらえなかったことに対して、特に怒りも悲しみもしていませんでした。

じゃあ花乃には何も求めていないのか?というと、初乗りで助手席に座らせるし、合鍵渡すし、試合前には窓を叩いて合図するし、優勝したらメールするし、文化祭は学内生徒だけの時間に中に入れようとするし、社務所に出入りさせるし、勝手に巫女の話を断ったのを責められたら「いいじゃない、僕の側にいてよ」なんて言うし、雛の作ったブリ大根は食べないけど花乃がおにぎりを用意するなら「いるー」と言うし、泊まりに来て一つのベッドで寝て背中からハグされたらそのまま足を絡めて眠るし、楼良を追い出した後に自分のベッドで一緒に寝ていくかと誘うし、学校内の花壇荒らしのことまでメールする…で最後は花乃のためにと楼良に自分の体配を教え込む。

自分がして欲しいことは言うし、してあげたいことはする。

花乃が力持ちなの分かってるくせに、重い荷物を持ってあげようとするしね。

神社内の人達は、陽大は雛の実の弟だと思っているはず。

いきなり同じアパートに住むことになった姉の弓道部の後輩だから、というだけで花乃と速攻で友達になったというのは、なかなか無理がありませんか?

「え?陽大くんの彼女って花乃って子かと思っていたら、お姫様みたいな子が現れたんだけど??花乃ちゃんとキスをしてたよね?」

と、神社内の人も内心謎だったのではないでしょうか…?

もちろん弓道という共通点があるから仲良しなんだ、で通る部分はあります。

花乃は陽大が他の人と話していたら、遠慮して話しかけない。

でも陽大は「花乃」と遠くからでも声をかけます。


子供の頃からずっと、陽大は花乃のことを遠くからでも見ていました。

初めての三人立ちの時に「花乃の体配は練習中に見てきたから大丈夫。僕は合わせられる」と言っていましたが、確かに過去編でもじっと花乃のことを見ています。

楼良が「陽大さんの見ている先のものを見たい」と言うのに対して、自分が弓を教えればその願いが叶う、と返すのは

「俺が見ている先は花乃だから、花乃の後ろで弓を引けるようになれば同じものが見られる」と思っていることのはず。

しかし、自分に憧れて弓道を始めた花乃に対して、陽大が指導したことは子供の頃からありませんでした。


私は「陽大は子供の頃から、別に雛に好意を抱いていたわけではないんだろう」と思っていました。

「ゾンビより手強い」と伊織に言っていましたが、火事の前から「雛の思い通りに物事が進む」と思っていて、だからこそあの火事が決定打になったのでは?

雛は陽大が小学6年生の時にキスしてきて、中1の時には予選会場の落ち着くスポットで待ち合わせをしようと誘われ、亡くなる直前の兄の目の前でもキスしてきた女の子。

そして陽大に「花染神社を継ぎたい」と言いつつ「私達は好き合ってるって陽向に言って」と頼んだということは、「将来陽大と一緒に花染神社を継ぎたい」と思っていたということ。

陽大が雛に抗った、というのは「予選会場で待ち合わせを持ちかけられた場所に兄を行かせた」くらい。

でもそれでも、兄のために抗いたいのに雛に惹かれてしまっていて、それが後ろめたかったんでしょうか?

夏合宿で雛が用意したがまん大会の景品の矢を欲しがっている兄の寝顔を見つめ、花乃が気付いたら手を震わせながら抱きついた。

アレは私は、一人で雛から迫られている後ろめたさを抱えるのが辛かったからかな、と思っています。

陽大は京都で、雛に抗って自分の意志を貫く力を蓄えようとしていました。

雛の望みを叶えるために、両親と兄が亡くなった。

そう思っているのであれば、雛が何かを望めばどんな災厄が降りかかるか分からない恐ろしい女になってしまいます。

という路線で考えると、大事な親友の花乃と雛を側に置いておくなんて、怖くて出来ないはず。

戸籍上は従姉のままなのだから、タイミングが来たら陽大と雛が結婚することはあり得る。

周囲に「実子です、と言っていたのは嘘です」と言えば良いだけだし。

それに抗う材料として「好きなのは花乃」というルートも作れるのですが、そもそも花乃と再会させたのは雛。

花乃と一緒にいることも、楼良と付き合うことも、どちらも雛の思惑通り。

でも心から、心から花乃のことを陽大が大事に思っているのは本当。

そしてそれは「花乃が止めてくれなかったら、自分も火の中に飛び込んで生きていなかった」という命の恩人という立ち位置では無いと思います。

そういう発想になるのであれば、陽大は生きる気力を取り戻して東京には戻っていない。

やはり「花に染む」の言葉でイメージしたのは花乃だし、「会いたかった」と口にもしています。

このルートで考えると、好きなのは雛で、親友が花乃にはなるのですが…

うーん、でも倭舞の他の友達と花乃は別格、という根拠が無くなってしまうかなぁ。

「自分だけの親友」という立ち位置には田路達だってなれる存在のはずだし。

花乃は「陽大が好きなのは雛」だと思っていますよね。

大人目線で見れば「雛は自分の口から、陽向と結婚する気は無い、花染神社を陽大と継ぎたい」と言えば良かったのに、と思うのですが、お祖父ちゃんや叔母さんのことを考えて言い出せなかったんでしょうか?

だからって中3の女の子が中1の男の子に、自分の代わりに家族に反対してくれ、なんて言うのは酷過ぎるけど…


「雛のお母さんだった伯母を好きだったのは、陽大じゃなくて兄。

だから兄は雛と一緒になりたがっていた」


この花乃の考えは、作者は途中で「陽向の話が入っていない」ということを編集さんから指摘されて入れた、と言っています。

ということは、ここはストーリー全体の中の核として最初からポイントとなっていたわけではない、ということ。

陽大の傷が癒えることがメインであり、その為に楼良がキーパーソンになる運命だった。

陽大は雛が花乃を巻き込んで楼良に弓道をさせ、その三人で試合に出たがっていると聞いた時点で「雛はあの時の試合を再現したいんだ」と分かったからこそ笑ったはず。

雛が望んだことなら、それは絶対に叶う。

ならそこに自分の思惑を乗せよう、と思い、一緒に三人立ちをするであろう花乃にもその再現を実感してもらうため、楼良に自分の体配を教え込んだ。

…と思うと、それはやはりベースに「花乃が予想していたように、雛を喜ばせるために陽大が楼良に弓道を教えた」があることになるけど、これは違うはずです。

その法則だと「雛のために、あの三人立ちが再現できるように楼良に自身の体配を教え込んだ」になるからです。

しかしラストはあくまでも「花乃を驚かせて、喜ばせて、笑顔にさせるため」となっていました。

それは雛には陽大の体配は分からないからです。

雛は、陽大と一緒に弓を引いてきた仲間ではないので。

うーん、じゃあ「陽大が背後にいると花乃は調子良く射れるので、高校時代のインハイでトラウマになった試合時の緊張感を和らげてあげるために、『陽大が後ろにいる』と思わせてあげたかった」のでしょうか。

そして「花乃が笑わなくなったのは自分のせいだ」と陽大は思っていますが、早気が治った時に花乃は笑っています。

あの時「付き合い長いけど、初めて笑っているところを見た」と言っていましたが、あれは謎ですね。

いやいや、子供の時の笑顔、覚えていたじゃない?

それとも「仮想現実が始まってから、初めて笑顔を見た」ということなのでしょうか?

敢えて筋を通すのであれば、「陽大に無関係なことで笑っている花乃を、初めて見た」になります。

そもそも「花乃が笑わなくなったのは自分のせい」とは、どういうことでしょうか?

一人生き残った陽大を守ろうという意識が強く、そして「陽大と一緒にいたい」というのを軸に人生設計をたてている花乃は、陽大に囚われた仮想の住人になってしまっている、ということ?

このルートになると、最後の花乃の涙は「もう陽大本人が側にいなくても、花乃は大丈夫」になってしまいます。

しかしそれでは、最後の倭舞の比々羅木神社に陽大が戻れる理由になりません。

花乃が笑ったのではなく、泣いたことにより、陽大が思っていたのとは違う呪縛からの解放が起こった。

犯人が捕まったと聞いて吐くほどショックを受けても詳細を知ろうとしなかった陽大が、現実を受け入れられるようになった。

そもそも…「自分のせいで笑わなくなった花乃を、俺がまた笑わせてみせる」という計画を立てている時点で、陽大はどれだけ自分が花乃の人生に影響を与えられるか自覚しまくってるよなぁ。

三人立ちを試合でしたのは冬。

流鏑馬は春で、花染神社の関係者は、まだ雛と陽大は姉弟だと思っていましたね。

雛のお父さんが初公判に向かっていて、次の公判には陽大も行くと言っていたということは、その辺りで花染神社の関係者も「陽大くんって、実子じゃなかったんだ」と知る可能性があります。

あの花乃の涙は、陽大との抱擁は、そこまで大きく陽大の心を溶かす効力があったのでしょうか?

陽大が倭舞のある現実世界に帰れるということは、雛を許したことにも繋がります。


陽大が解放されたのは、楼良と恋をして変わったから、と思う人もいるようです。

私は流鏑馬シーンの楼良と新保さんは、陽大という男性だけでなく弓道も好きだからこそ、その組み合わせであるあの場に行きたかったのかなぁと思いました。

花乃と陽大が抱擁している時、楼良は一人で陽大の弓に向かっていて、もう彼女は陽大にキスをしてもらえた時点で彼女になるという夢からは覚めていたのではないかと思うからです。

更に「花乃は『親友』と言ったら昔笑ってくれた」と言われていて、あくまでも花乃の対として試合に出ると言われている以上、彼女の役目は「花乃のため」なのです。

うーむ、雛も、楼良も、そして花乃も陽大を大事に思っていて、それは陽大も分かっている。

このままの運命の流れだと雛から逃れられない、と思っていた陽大が、その呪縛を解かれた。

ので、花乃が「男になりたい」という気持ちではなく「女として陽大の側にいたい」となれたことが、陽大のそれまで花乃に向けてきた愛情が実を結んだようにも思えるんだけどなぁ。

だって花乃に無理させず、気を遣わせず、共に倭舞に帰るためには、自分が作り上げて花乃にも付き合わせた仮想から陽大は出ないといけない。

それか「雛の望みと自分の望みは同じだ」と陽大が気付いたのか…?

あの事件に関しては、確かに雛のやったことのタイミングは悪かったけど、でも悪いのは犯人です。

犯人ではなく雛を恨む、雛は自分の人生を巻き込む運命の人、と思っていたけど、自分なりに考えて進んでも大丈夫なんだ、となった、のかな?

とダラダラと書いていて、ちょっと自分なりに分かったかもしれません。

もちろん解釈は人それぞれで、正解はありませんが。


私は今は花乃と陽大が一緒になる未来であって欲しいな、という想像をしていますが、雛と楼良の3人がかりでなければ陽大の呪縛が解けなかったのは分かります。

そして後半の雛の願いは、陽大が自分と一緒になることではなく、自分のことを許してくれて、その上で倭舞の過去をキチンと受け止めて前に進んで欲しい、でしょう。

だから次の公判には出る、と言ったこと、それを聞いた父が「その気持ちだけでいい」と言ったことが嬉しかった。

ここで、雛の一つの願いがまた叶っています。

花染神社を雛が継ぐ夢も叶いそうです。

元々2人は恋愛どうこうの前に肉親、従姉弟ですからね。

そう言えば陽大は雛の父の「おやおや」という言い方を、陽向達の命日のお食事会でしていました。

先はともかく身内としての繋がりはキチンと保たれているし、先が明るそうな雛の笑顔が良かったです。

時々、ネットで「陽大はモラハラ男」と言う人がいましたが、えーと…楼良にも伊織にも田路にも「もう二度と会わない!」とか冷たく言ったりするし、特に楼良にはキツイから、モラハラにも見える…かな…?

花乃には、雛への怒りで一度目の前で机を叩いただけなのに…

はー、何回にも渡ってダラダラと書いて、「くらもち花伝」も読んで、やっと見えてきたかもしれません。

ここまで長く感想やら考察を書いてるブログ、とりあえず現時点では見当たりませんでした…

1.花乃は初め流鏑馬をする陽大の目に心を奪われた

2.陽大は花乃のことを、自分だけの特別な存在だと思った

3.雛の願いと陽大の行動が相乗効果を生む運命

4.陽大はただ、早気やブランクに悩んだり焦っても自分との過去を大事にしている花乃のために、試合で良い結果を出せるようにしてあげたくて、兄と3人の時のような気持ちで試合に出させてあげたかった

5.陽大にとって、花乃は男友達の親友とも肉親とも違う、大事な存在であり、女の子

6.陽大と一緒にずっと肩を並べて側にいるなら「男になれば良い」と花乃は思っていたけれど、それは「陽大そのものになりたい」という憧れを追っていたものだった

7.雛と陽大は兄を死の間際に傷付けたという負い目、花乃は兄を助けられなかったという負い目をずっと抱えていたけれど、やっと鎮魂できた

8.第三者の直情的で素直で賢い伊織と楼良が、弓道をやる人達とは違う視点で陽大を変えた

9.花乃はやっと陽大の前で涙を流して本音を見せることができ、それが陽大を仮想世界から出る機会になった

10.陽大は雛からキスされたり、楼良を抱きしめたりキスはしたけど、首筋に顔を摺り寄せ、足を絡ませたり腰に手を回してピッタリと寄り添うように抱き締めた相手は現状花乃だけ


かなぁ。

私は雛の望みは「陽大が良い子の仮面を被らなくて済む幸せ」だと思います。

入谷は自分を特別視しない、そして共に肉親を亡くした共通点を持ち、弓道や神社や生徒会の仕事以外の趣味的な付き合いが出来る友達。

花乃は「……」と言葉を多く使わなくても寄り添い合えて、そして普段は受け身だったりモラハラぽかったり嫌味も言えるお母さん似の陽大が、子供のように甘えたり、助けたり、ずーっと側にいてくれると安心出来る存在。

楼良はねー、長い目で見ると陽大にはもう必要の無い存在なんですよね。

文学部なので将来少女小説家になり、彼女をありのまま受け止めてくれる男性と出会って欲しいな。

陽大の家で手料理一つ作ろうとしなかったあたりは、雛のお母さんに近いのかもしれません。

だから雛のお父さんみたいな、温厚で優しい人といて欲しい。

陽大は…やはり倭舞町に戻って宮司になり、食事や諸々は勉強してきた花乃が上手く支えつつ、お互い弓道もやって親友夫婦になって欲しいかなぁ。

真実は分かりません。

が、「くらもち花伝」なりインタビューを読む限りは、陽大は「いつもポケットにショパン」のように「あるキッカケでガラリとクールになったけど、心の中に変わらぬ優しさを持っている青年。

「花乃ファンがちょっとガッカリする」は、私は「ボーイッシュさが抜けた美女キャラになる」とかであって欲しいなぁ。

何にせよ、陽大が花乃と一緒になることは、亡き両親も、叔父も雛も楼良も田路も、皆んなが納得する流れだろうなぁ、と勝手に思っています。

「くらもち花伝」では楼良はギャップを楽しむキャラだったようなことを書いていましたし、やはりストーリーを動かすキーは主人公の花乃だったし、その花乃と陽大が第一話から弓を寄り添わせていたことが、物語の完結となって欲しいなと、これだけ何日も考えて帰結したところでございます…。
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