初めての狂言「因幡堂」・金剛流の能「巴」感想~分からない?眠くなる?

2022年02月13日
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今日は初めて、能と狂言を鑑賞して来ました。

行ったのは渋谷で上演された「セルリアンタワー能楽堂開場二十周年記念 定期能二月-金剛流-」の第一部で、演目は狂言「因幡堂」、能「巴」





成田美名子の漫画「花よりも花の如く」をずっと読んでいるので、一度生で能を観てみたかったんです。

「巴」も20巻でちょっとだけ出て来ていました。


花よりも花の如く 20【電子書籍】[ 成田美名子 ]

元々、源義経と静御前好きなので巴御前のことはそれなりに知っていますが、能の「巴」は歴史とはまたちょっと違ってます。

さすがにこのご時世なので、入口では検温と消毒。



席は7割か8割くらい埋まっていました。

やはり年配の方が多かったけど、ポツポツと若い方もいたし、中高年で初鑑賞っぽくはしゃいでる女性組もいましたね。

まぁ、私も漫画で得た知識と、巴御前の歴史しか知らないんですが…

席に説明パンフレットやセリフ(?)の書かれた紙、他の公演のチラシがあり、先にあらすじを読んで内容を把握。

開演後すぐに解説があり、そこで更に詳しく説明もしてくれました。


ちなみに、狂言って能の前座とか、合間にやるものなんですね。

野村萬斎が有名だし、狂言だけの公演もありますが、能と狂言はセットでもあるみたい。

「花よりも花の如く」でも野村萬斎をモデルにしたようなイケメンでTV俳優もしている芳年さんが出てきますが、能役者の俳優は観たこと無い気がします。

狂言「因幡堂」は、分かりやすいし面白くて、周囲でも笑い声が上がっていました。

大酒飲みで、金遣い荒く夫を虐める妻。

そんな妻が実家に帰っている間に勝手に離婚の手続きをし、更に次の嫁を授けてくれと神頼みをする夫。

しかし帰って来ていた妻が状況を察知し、天啓のフリをして

「ここに行けば、お前の次の嫁がいる」

と伝え、顔を着物で隠して自分がそこに立って夫を待ちます。

まさか妻とは知らずに家に連れ帰り、結婚の盃を交わそうとすると、女は顔を隠したままお酒をグビグビと飲み続け…

結局、最後は激高した妻に追いかけられながら夫婦は退場して終わり。

会話自体は昔言葉なので分かりづらい部分もありますが、表情や動きが今時っぽいというか、分かりやすくコントみたいでした。

いや〜女目線で見たら夫は酷いけど、妻も大概なもんだしな…

他の狂言も観てみたくなりました!


狂言劇場 その壱 野村万作+野村萬斎 [ 野村万作 ]

どうせなら、一度は野村萬斎の狂言を一度観てみたいものですが…

さすがにめっちゃくちゃ人気らしく、チケットは即完売するそうですね。
休憩を挟んでから、能「巴」の始まり。

解説の方のお話曰く、大抵の能は世阿弥の作だけれど、これは誰が作ったか分からないそうです。

そして主人公(ツレ)が女性というのはこの作品だけなのだとか。

「花よりも花の如く」の中では、あらすじだけ紹介されていました。

木曽義仲が義経に敗れて命を落とす間際、一緒に戦っていた巴は

「敵に首を取られるくらいなら自害しましょう、私も一緒に逝きます」

と言うのですが、義仲からは

「お前は女だからダメだ。代わりに俺の小袖の切れ端を家に持ち帰って、状況を伝えてくれ」

と言われてしまいます。

そこに敵が現れ、巴がそれをやっつけて義仲の元に手柄を持って駆けつけると、もう既に義仲は命を絶っていました。

絶望しながらも巴は言われた通りに小袖を持って変装して戦場を去るのですが、この

「一緒に逝けなかった」

という巴の後悔が霊となって残っていて、同じ木曽出身の男の前に現れて弔いを頼む、というお話。

「花よりも花の如く」の中では、憲人が

「巴は愛人だから、本妻からしたら戦場で愛人と一緒に死なれたらヤダ」

「でも、愛人が男の遺した小袖を本妻に届けに行って渡さなきゃいけないのもヤダ」


と言いますが、こういうのは解説の方も言ってましたが解釈が分かれるとのことでした。

と…設定自体は分かったし、何を言っているのかプリントに書かれてはいるのですが…

ハッキリ言って、やっぱり能を観るのは眠くなる!


理由はとにかく、昔言葉で強弱をつけながら歌うように話されるあのリズムが、α波出てるのかな?というくらい眠りを誘います。

これも解説の方が言っていましたが、能は普通の舞台と違って舞台装置のカキワリがあるわけじゃなく、ただ状況を想像しながら観るしかありません。

でも…何を言っているのか分からない、ゆっくりゆっくり、足の裏を完全に舞台から離れさせずにスッ…スッ…とうろうろと歩くのを観ていると、それはそれは眠くなります…

大鼓と小鼓の音、地謡の歌声もリズミカルで、時々大きな音で目が覚めるけど、でも合間合間が長い〜。

やっぱり漫画で読むのと、実際に観るのは違いますね。

漫画だと演じる人によって観客の解釈が変わったり、感動したり、色々と刺激を受けていましたが、それは余程見慣れている人の境地なのでしょうか?

私の周囲のご高齢の方々も、時々コクリコクリと首を上下させて、ちょっと寝ていました。

後半の戦う巴の衣装や動きは優雅で美しいし、能面はやはり可愛らしいなぁとか、観て良かった部分はもちろんあります!

しかし漫画と違って、あんな若い人がいっぱい舞台にいるわけじゃないんですね、現実は…

憲人みたいに色白の背の高い若者が、能面の下で肌を赤くして色気を誘う…なんてこと、無いのか、そりゃそうか…

ご高齢の熟練の方々だからこその力があるのでしょうが、初鑑賞の身としては、あの低い声とゆったりした話が眠気をどんどん誘ってくれてしまい…

ちなみに検索をしたら、今回見た金剛流は「花よりも花の如く」でも結構大きなテーマになった舞台「土蜘蛛」の演出を始めたところでもあるそうです。

うーん、土蜘蛛は派手な演出を一度観てみたい!

知人に感想を話したら

「まぁ、能の鑑賞って眠気を誘うのも含めて楽しむって解釈している解説者もいるらしいよ」

と言われたのですが、そういう意味なら安い3千円くらいの席で鑑賞するのも良いかも?

つまらないから眠くなる、というより、心地良い声が眠気を誘い、ふと目を開けた時に美しい着物と能面が見えるのはそれはそれで良い経験だと思います!(褒めてる!)

コロナ禍の中ではこういう伝統芸能も大変だと思いますが、でも日本の伝統芸能、というのはやはり残って欲しいもの。

でも、なかなか日本人の若者どころか、私世代でも関心を持つのはなかなかハードルが高い気もしました。

初心者向けのものがもっと色々あった方が良いのか、あるけど私が知らないだけなのか…

うん、まだ初鑑賞したばかりなので、何も分かりません。

ので、また機会があったら次も行ってみたいと思います!

とりあえず「花よりも花の如く」で紹介された話の方が見やすいから、能の世界の方々はこの漫画を普及させるのが良いですね…
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