「パワー・オブ・ザ・ドッグ」ネタバレ感想~アメリカを見下すイギリスを痛烈批判!?かつBL風映画

2022年01月09日
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アメリカ人女性と話していた時に、「The Power of the Dog(パワー・オブ・ザ・ドッグ)」という映画でベネディクト・カンバーバッチが残忍なカウボーイの役をしていて、同性愛の話らしい、というのを聞き、早速観てみました。



この話になった流れは、私が「ブロークバック・マウンテンを観た?」と聞いたからです。


ブロークバック・マウンテン (字幕版)

そちらは同性愛者だとバレたら命に関わるような時代に、山の中でコッソリ逢引をするカウボーイ2人のお話でした。

カンバーバッチがそんな感じのカウボーイ役をしているのかな?とよく調べないまま観たのですが…

うん、確かにBL風な部分はある!

ただ映画の中では「どうも主人公のフィルはゲイっぽい」と思わせるシーンはポツポツとありますが、彼がそれを自分で言うことはありません。

また他のネタバレ感想的なサイトには「フィルとピーターが肉体関係を持った」と書かれていましたが、原作はそうなのか未確認だけど、映画の中ではそういうシーンはありません。

舞台は1920年代のモンタナ州の牧場。

主人公のフィルはイェール大学卒業のインテリだけど、荒くれ者な典型的カウボーイという風貌。

実家の牧場を弟のジョージと継いでいて、かなり裕福そうで両親は他の街に住んでいます。

一方弟の方はいつも身ぎれいにしていて大人しい真面目そうなタイプ。

この弟がレストランを経営する未亡人のローズと再婚し、ローズの息子ピーターと共にやって来たことにより、「弟が金目当ての女に誑かされた!」とフィルは怒り狂い、イジメをし続けます。

ピーターは絵や美しいものが好きな一方、残忍なところのある美少年。



母親の再婚後は進学で他の街に行っていましたが、長期休暇の時に戻ってきて、母がフィルのイジメが原因で精神を病み、アルコール中毒になっていることを知ります。

ピーターはフィルと徐々に親しくなり、フィルは彼のために革で紐を編み始めたり、乗馬を教えたりします。

あともう少しで紐が編み上がるという時に、ローズは腹いせにフィルの革を先住民に勝手にあげてしまいました。

怒り狂うフィルに、ピーターは自分が隠し持っていたという革を渡しました。

実はこれはピーターが見つけた炭疽菌で死んだ牛のもの。

手に怪我をしながらも紐を編んでいたフィルは翌日急に体調を崩し、そのまま亡くなってしまいます。

ピーターはゴム手袋をしながらフィルが残した紐を持ち、それをそっとベッドの下に置いたため、

「あぁ、ピーターは母親のために、わざとフィルに近づいて炭疽菌に感染させたんだ」

と分かるラストでした。


さてフィルはどうも同性愛者っぽいな?と思われるシーンは

●やたらブロンコという男性の話をしている。彼のイニシャルの入ったハンカチを隠し持って1人で体に巻き付けて恍惚の表情をしている。

●山の中に小さな隠し扉をつけた洞穴のようなものがあり、そこに男性の肉体写真が掲載された本を箱に入れてしまっている。

●若い頃遭難して死にかけた時、ブロンコとピッタリ寄り添い合って眠って命が助かった話をピーターにする。

ピーターから「裸で?」と聞かれても答えないが、その後二人で煙草を交互に吸い合う。


というくらいで、ハッキリと彼の口から同性愛者だと言ったりはしないし、ピーターと意味深に見つめ合ったりはするけれど、キスしたりするようなシーンがあるわけではありません。

この仄めかす感じが、BLというより「やおい」っぽい感じだなと思いました。

「ブロークバック・マウンテン」を観ていたら、「あぁフィルは同性愛を隠さなきゃいけなかったんだな」ということは分かりますが、先住民への差別的な言動の方が映画の評価に影響を与えているのかもしれません。

ちなみに炭疽菌のことはよく知らなくてググったら、動物から人へは感染するけど、人から人へは感染しない細菌なんですね。

ピーターはどういう子なのか、分かるようで分かりません。

キレイな絵や花や動物が好きな一方で、自死した父親を1人で下ろしたり、ウサギの解剖をしたり、怪我したウサギを撫でた後に躊躇いなくとどめを刺したり出来る。

そんな彼に亡き父親も「強い(人の心が分からない)」というような言い方をしていたと語っています。

こういうサイコパスっぽい美少年が、母をイジメる義理の伯父に近付き、命を絶つ。

これは結構、腐女子が好きな展開だと思います。
この映画はかなり高評価を得ているようですし、映像もキレイでそれなりに良かったのですが、「皆んな観た方が良いよ!」とは言えません。

あんまり日本人男性にはウケないだろうし、腐女子じゃない女性には「何が言いたいの?」と思われるかも?

多分なんですが、イギリス人のベネディクト・カンバーバッチがアメリカで移民を敵視するカウボーイ役をした、そして利己的な性格が災いして命を落とした、というのがポイントなのでしょう。

最近ポツポツと言語交換アプリで見かけるイギリス人のことを書いていますが、ビックリするくらいあからさまにアメリカを見下す発言をする人がいます。

また、英語はラテン語由来だし、フランス語とかも混ざってるのに、「英語は俺達の国の言葉だ!」と偉そうにするのか謎だったんですが、アメリカ人女性に聞いてみたら

「多分あちこちに移民して英語を広めたのは自分たちイギリス人、と思っているから」

と言われて納得しました。

でも、そうなると「アメリカ人は先住民から土地を奪った」と批判するのはおかしな話です。

だってそれやったの、イギリス人のあなた達の先祖ですよね?

という部分に言及する記事を、ササッと検索した限りでは見つけられませんでした。

「こんな嫌な性格の男の役を引き受け、イギリス人なのにモンタナ州の訛りを完璧に再現したカンバーバッチは勇気があってプロ根性がある素晴らしい俳優」

という評価は見ましたが。

他の同意見を見つけていないのでこれが正解とは言えないのですが、女性監督のインタビューでは「多様性を表現したかった」とあるので、

「多様性(性的マイノリティー、女性蔑視、学歴コンプレックス、貧富の差、人種差別)」

というものを盛り込んでいるのでは。

そしてその人種差別の中には「アメリカ人と先住民」だけでなく「イギリス人とアメリカ人」も入っているのでは?

という話に興味がある日本人は、あまり多くない気がします。

正直、日本語を勉強中と言いながら日本を見下してくるイギリス人を何人か見て、私はすっかりイギリスに偏見を持ってしまいました。

日本に住みながら日本の悪口を書いて見下している(和製英語が変、とか、移民に無駄に厳しい変なルールがある、とか)イギリス人を見ると

「あ、じゃあ日本より圧倒的にコロナの感染者が多いイギリスに帰ったら!?」

と言いたくなります。


ちなみに映画監督のジェーン・カンピオンはニュージーランド出身で、ロンドンの制作会社でアシスタントをしていた過去もあるようです。

制作には他国が関わっていて、イギリスもその中に入っているため、どんな風にイギリス人が思うのか感想を聞いてみたいけど、答えてもらえるかなぁ。

センシティブな問題が関わっているので、なかなかオープンに話してもらえない気もします。

とにかく「先住民」と「LGBTQ」の話題は荒れやすいから…

これは言語交換アプリを使いだして、つくづく実感しました。

アプリ上でこうなんだからリアルに会話となったらもっとすごいのかもしれません。

日本人はこういうの、匿名では書き込んでも面と向かって言わないけど、あの人達は面と向かっても言うから…

よく日本は自殺大国だ、世界一自殺率が高くてヤバい、と言われますが、日本の他殺率は圧倒的に他国より低いんです。

これはまた今度改めてデータを貼って書こうと思っていますが、私の推測だと

「日本人はトラブルが起こった時、怒りを相手にぶつけるよりも、自分の消してしまうことを選ぶ」

という側面があるのではないかと思われます。

まぁ「日本は自己責任の国」と言いますしね。

じゃあ自分に怒りをぶつけるのではなく、相手に直接ぶつけるのが先進的でしょうか?

違いますよね。

多分日本人は「嫌なら逃げられるようにするべきだ」と考えています。

そして何故か「欧米なら逃げ道がたくさんあるけど、日本には無い」と思っています。

いや〜だったら欧米やらあちこちの国の他殺率が圧倒的に日本より多い、という話と合わなくないか?

とかこの映画を観て日本人なりに私が思うことも、欧米からしたら違う反応だと思います。

あくまでも観客個人個人がどう思うか、ですしね。

BL風の世界観を楽しむも良し、ミステリー的に楽しむのも良し、俳優の演技を楽しむのも良し。

それでも観る人によっては面白くない、残酷で不快、という部分があると思います。

ちなみに「主人公は残酷」という設定ですが、彼のイジメは私はそこまで辛辣だとは思いませんでした。

あくまでも「皮肉を言う」「冷たい目で見る」という感じで、怒鳴ったり嫌がらせを延々とし続けるという程ではありません。

そこがまたイギリス人らしい嫌味なイジメかもしれませんが。

というのが私なりのネタバレ感想です。

他の人の感想もこれから探ってみようと思います!
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