西村しのぶ「砂とアイリス」最終5巻ネタバレ感想~男より仕事と女友達が大事?
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まさかの最終巻でビックリ、というか、西村しのぶがキチンと物語にピリオドを打ったことにビックリ!
今まで、「ここで終わり?まだ続けるの?」というのが分からないまま、気まぐれのように連載が続いては止まり、また再開し…で、エピソードの区切りの良いところで止まったままという作品が多かったので、この作品もそんな感じでフワッと途中で放棄されるのかと思ってました…
砂とアイリス 5 (マーガレットコミックスDIGITAL)
途中で3巻の発売が延期しまくって予定から半年も遅れた時期もあり、本当に完結すると思っていなかったのですが…
発売予定日から半年遅れで、やっと無事出版されました!砂とアイリス 3 [ 西村 しのぶ ]梶谷先生となぎさの関係がどうなるのか読みたかったので、ワクワクとページを開いたら…初っ端から、すでにベッドイン後!「ヤバイ、チョー楽しかった…」と笑うなぎさと、抱き寄せる梶谷先生。もうしてしまった、のね…。梶谷先生の癒しムードで、その後の逢瀬でもついつい寝落ちしてしまうなぎさ。でも、「先生と車には乗らない」「先生のとこ...
5巻を読みだしたら随所随所に終わりをチラつかせるセリフがあり、ラストは第一話最後の、梶谷先生が長瀬が発掘現場に立つ後ろ姿と今を重ねて終わったため、改めて電子書籍の説明を読んだら「最終巻」とあったので納得しました。
3巻、4巻は発掘調査や仕事の合間に梶谷先生と長瀬の不倫が続行する、という恋愛要素があり、その関係性もどう終わらせるのか気になっていましたが、5巻の二人はもう山小屋での逢引はしていません。
まぁ西村しのぶの漫画あるあるだけど、オシャレな恋愛は終わりが明確ではない、みたいな感じ、かな?
梶谷先生は奥さんが買った海外の島のワイナリーに移住する話が出ているし、長瀬は転職をしたこともあり、そうそう簡単に会える関係性では無くなるのかもしれません。
が、「今になって、このエピソードぶっこむ!?」という
青山先生には長年付き合っていて、海外にいることの多い研究職で子持ちの恋人がいる
というのが発覚し、しかも二人は1年に1度しか会えないこともザラというエピソードだったため、そういう感覚のまま梶谷先生と長瀬もフワ~っとしてるけど大事、な関係になるのかもしれませんね。
元々何千年とか何百年という単位の昔の調査研究をしている人達の話だから、時間の流れの感覚が違う、というのもこの作品のテーマだったのかな?
でも4巻の山小屋で逢引する梶谷先生と長瀬のエピソードも好きだったので、5巻はもう短時間飲んだり、展覧会を見に行くだけの短時間デートしか無かったのでモヤモヤ…、というか、妄想をさせられますね。
結局長瀬の彼氏は1コマ回想でしか出てこず、しかもちょっとアホっぽかったのが気になるけど…
彼氏から一緒に暮らそうって言われたのを流したところから、続きは描かなかったのね。
発売されていたのに気付かず、読むのが遅くなってしまいましたが…西村しのぶの「砂とアイリス」4巻が出ていたので、早速買って読みました!3巻の発売は2016年の年末だったので、3年ぶりの新刊です。3巻は梶谷先生と長瀬が山のコテージで逢引を始め、案外けろっと不倫をしているけど…どうなるの?どう落とし所をつけるの?と、いうのと、またオシャレな生活の知恵的な小ネタがあるかな~と楽しみにしていました。砂とアイリス 4 (愛...
ラストの一番大きなポイントは、長瀬は友人の永野と一緒に同じ発掘調査会社に転職した、ということでしょう。
途中、永野が仕事でやらかして遺跡物をケースごと紛失して落ち込むシーンがありましたが、それがその後出てきたのかは描かれていませんでした。
なんかこうお互い色々あって、引き抜きの声掛けも色々あって、その上で長瀬は大学の研究室ではなく、友達と一緒に大好きな現場仕事が出来る環境に行った、というのが大団円な感じの終わり方だったのかな。
それでも青谷先生は元生徒たちのInstagramを愛おしそうに見ていたし、三木先生と長瀬達は一緒に働いていたし、研究職の方々はどこにいても繋がっていくってことなのでしょう。
…っていうか私はこういう研究職の仕事が全然分からないので、想像なのですが…
西村しのぶは元々、その時興味があることをエピソードにして連載する、という同人作家のような部分があると思います。
各キャラクターとかエピソードは魅力的なのだけど、美味しいものの話とか、実在するお店や観光地の話とか、生活の中の小話がとても具体的。
「それ、想像じゃなくて、取材した人から聞いて面白かった話を入れてるんですよね?」
と思うくらい唐突なエピソードも多く、それはそれで面白いのだけど、ストーリーものというよりエッセイ感覚だなとも思います。
今までだとファッションと恋愛の要素がほとんどを占めていたけれど、今回は発掘調査や研究職の方をメインにしたい気持ちだったのかな?
それはそれで知らない世界なので面白かったし、後半の梶谷先生と総務の人が喧嘩したり、喫煙所を撤廃されたけど戦って自販機横の灰皿を獲得するエピソードも良かった。
落ち込んだ永野のために、長瀬が珍しく行列に並んで美味しいビスケットを手に入れるのも良かったな。
このビスケットのお店もモデルがあるんだろうと思って探したんですが、分かりませんでした…
長瀬が店に並んでいる時に店名が出ていましたが、「Charamel&Vanilla」(Caramelに間違えてhを入れた?)となっていて、でも青山先生に渡した時には別のロゴが入ったペッパーバッグになっていたんですよね…
以前神戸に行った時にも、西村しのぶの漫画に出てきたお店に行こうとしたら見つからないところがいくつかあったので、店名を変えている??
私が近々神戸に行くことにしたきっかけは、西村しのぶさんの「一緒に遭難したいひと」4巻を再読していたら、友達が移住したから近々行こうと思っていた小豆島が出てきたからです。主人公の彼氏のマキちゃんが、お祖母ちゃんの持っている小豆島の土地でオリーブ畑をするかどうか?の下見で小豆島へ行き、地元のお素麺屋さんの可愛い前掛けをバッグにしたりと楽しむ~というお話でした。一緒に遭難したいひと(4) [ 西村しのぶ ]西...
海に行って牡蠣食べまくって、そのままお店の宿に泊まるのも楽しそうだったなー。
私はもう掲載誌を買わなくなってるので分からないけど、おばちゃんは好きだけど若い子にはピンと来ない作風かなという気もします。
「砂とアイリス」も何年か前に匿名掲示板を見ていたら
「オシャレな軽い不倫みたいなのは、今の時代に合わない」
と言われていました。
確かに彼女の作品では、皆んな気軽に不倫してるし、恋愛相手に強い執着心は持たない。
軽く声掛けて関係が始まって、が多いから、梶谷先生と長瀬みたいに「学生と大学講師が、卒業から何年も経ってから関係をもつ、けど片方既婚で片方は彼氏持ち」というのも西村しのぶらしいんだけど…
登場人物達皆んな自由で軽妙で、でもその代表みたいだった青山先生が電話で恋人には
「俺は別れたくないよ、好き」
と優しく言ってるところとか、良かったけどなぁ。
長瀬が深くは突っ込まなかったため、相手が男性かも?という謎を残したままなのも、またあれはあれで良かったですね。
都会っ子のドライさをオシャレに描く作風、私は好きなんだけど、でももうちょっと青山先生のお相手のことは知りたかったわー。
まぁ、皆んなそれぞれ色んな顔を持っていて、転職も別れも突然来ても大丈夫、というのが最終巻のテーマだったのかもしれません。
奈良の鹿の冬毛とか、自宅マンションに猪が出没とか、関西エピソード満載なのも関東民としては興味深かったなぁ。
どうしても東京が舞台の作品が世間的には多いので、あくまでも自身が住む関西を舞台にオシャレに描き続けた西村しのぶは、希少な存在かもしれませんね。
実際神戸に行ったら、「漫画と全然違う!」と思ったけど…。
私自身は西村しのぶの漫画の世界のような生活なんてとても出来ていませんが、憧れてChloeやヘルムートラングの服買ったり、美容法を真似したくなったり、あんな風に軽妙に恋愛したりしてみたい人生でした。
少女漫画カテゴリーでもなく、大人向けだけどおばはん臭くない。
ただ今の若い子はそんなにブランドも興味無いし、不倫がオシャレみたいなのはもうコンプラ的に微妙な時代なのかしら?
美人でオシャレな長瀬が、カブに乗って現場を走り回り、大学の研究室で仕事したり、先生たちとやり取りしたり、恋をしたりする様子は、いっそ現実離れしていて面白かったです。
正直、物足りないと感じる部分もあったけど、それでも完結して良かった…
また新作が出たら読みたいなぁと思いますが、コロナ禍の中に彼女が描きたいテーマがあるかしら…?
ご本人が興味を持っているエピソードを詰め込むタイプの方だからなぁ。
とりあえず、彼女の描く長髪の男性はツボです!
あ、短髪でも梶谷先生は素敵だったわ〜。
奥さんに夢中で振り回されてるのに、何で気軽に不倫してたんだろ…とか、奥さんの話をよく長瀬に出来るな、とか色々現実的に考えたら思うけど…研究者ってそんなもの?
フワフワの動物、美味しい食べ物、オシャレな服やカフェ、街紹介、お仕事紹介…そういうのが色々詰まってて、やっぱり西村しのぶ、好きだなぁ。
今の時代、というか私の生活からしたら、もうファンタジーだけども。
若い子にオススメの漫画と紹介し辛いし、同世代のマンが読む人にもオススメし辛いんだけど…
感情移入するタイプの作品でも無いから、誰とも語り合えないんですよね…
後書きは最後までお花のことで、長年薔薇や色んな花を育てるのに熱中している西村しのぶの生活、憧れます。
リアルな生活を描くエッセイ的な作品も人気だけど、でもおばちゃんのリアルな生活とか漫画で読むより、こういうファンタジーが読めるの、良いですよね。
全然ファッション雑誌も買わなくなっちゃってるけど、昔持ってたファッション誌への憧れみたいな感覚で読める!
と、「砂とアイリス」の最終巻ネタバレ感想から西村しのぶへの感想総括みたいになってきてしまいましたが、彼女の作品の中では珍しいタイプのテーマだったと思います。
彼女の好みや年齢からすると、行き過ぎたロハスとかフェミとかに転向する可能性もあっただろうに、そこの軸がぶれなかったのは良かったな。
最近の中高年の女性漫画家、急に政治とかフェミとか声高に作品に盛り込んだり、Twitterで主張するようになっていて、困惑していたから…
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西村しのぶの作品の中では、一貫して女性は強く凛々しく美しく賢く、男性は優しくて飄々としていて、けたたましい関西人が出てこないのも良かったです。
と、まるでもう西村しのぶが引退しちゃいそうな予感を私は感じているけど、本当にどうなんだろう?
コロナ禍の不満だらけのSNSの世界は、彼女の作風から完全に遠いところにあるからなぁ。
あぁ、でもそんな中でもNASAが火星の調査を始めたり、海外で新しい人種の骨が発掘されたり、研究職の方はフィールドワークも続けてますね。
やっぱり変わったものと変わらないものがある、はず。
「砂とアイリス」のテーマのように、今このときだけじゃなく、何年も何十年も何百年も、もっと先の時代のことを考えるロマンというのは、いっそこれはこれで今の時代に合っていたのかも、という気にもなってきました。
西村しのぶ先生、お疲れさまでした!
これからも時々読み返して、そして長瀬と永野が、梶谷先生と青山先生のようにこの先ずっと一緒に笑って仕事しているところを妄想したいと思います。
実際には結婚や出産でお互いにすれ違ったり、価値観変わる日が来るかもしれないけどねっておばちゃんは思ってしまうけど…そうならない西村しのぶワールドの妄想をしていきたいです!
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