トランプ大統領とアメリカ政治腐敗のドキュメンタリー映画「華氏119」ネタバレ感想

2020年12月06日
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映画「サイレント・トーキョー」を観て、テロと言えばアメリカ同時多発テロだよなと思い出し、当時のニュース映像をYouTubeで観てみました。

当時友人の家で深夜テレビニュースを観ていて、二機目の飛行機がビルに突っ込み、崩壊する様子を

「映画みたいだなぁー」

と思った記憶があります。

人が亡くなっているかも、とか、何が起こっているんだろう、とか、若かったせいもあるでしょうが何とも思わず、

「所詮他国のことだし、日本に原爆を落とした国はそういうことが起こるものなんだろ」

程度にしか思わなかった気がします。

その後「日本もテロ攻撃されるかもしれない」という噂が出て、その理由が「米軍基地があるから」というものだった為、

「戦争が終わって何十年も経ってるのに、いつまで日本人は敗戦国でいなきゃいけないの?

米軍基地には出て行って欲しい」


と思うようになりました。

飛行機に搭乗する際のチェックも厳しくなり、液体を運ぶのも量が規定され、日本人としては大迷惑な気持ち、と思い続けていた私がアメリカに興味を持ったのは今年から。

それまで全くアメリカに行くつもりはなかったのに、友人の影響でTOEICのために英語勉強を始め、昨年再会したアメリカ在住の友人宅に遊びに行こうと思い始めたのがキッカケです。

私が子供の頃、大人はどんな気持ちで

「戦争を忘れるな、次世代に語り継がないといけない」

と思っていたのか分かりませんが、私の中ではずーっと

「アメリカは野蛮で残酷で、そしてお金持ちでハイテクノロジーな国」

というイメージが残っていました。

「戦争反対」とか「平和が一番」みたいなことより、「はだしのゲン」の残酷さの印象しか子供に残さなかったな、と思っているため、私は広島の原爆ドームに行くつもりは今のところありません。

ひめゆりの塔は行きましたが、やはり印象に残っているのはグロさだけ、なんです。

私のような考え方を、マスコミは取り上げません。

いつの間にか戦争は「家族愛、恋愛を感動的に語る消費コンテンツ」となりました。

そう受け取られるとは思わなかった、と戦争体験者は思うでしょうが、当時の教育やメディアはそんな風にしか私には受け取れなかった。

という経験があるため、私はネトウヨとかパヨクとか?他国を差別したり、崇めたり、SNSで見聞きしたものを鵜呑みにして騒ぐ人達は「馬鹿だなー」と思ってます。

だって他人に印象を植え付けられて、そもそもの「平和」という概念が擦り合わなくなるのは変だから。


こんな私は昨日9.11の時の映像を観て、自然とボロボロと涙が流れました。



ルームメイトの友人と窓越しにワールドトレードセンターの様子を撮影していた女の子は、最初は笑い声をあげています。

撮影していた女性がCNNのインタビューを受けている映像なのですが、ご本人も当時は若くてナイーブで、どうしたら良いのか分からないというリアクションだったと話していますが、2機目の激突で反応は激変。

「OMG!テロリストだわ!」

「私たちどうしたら良いの⁉︎」

「分からない!分からない!」


外に出ると、ビルを見ている人もいれば、普通に歩いている人もいる状況。

他の映像では、ビル崩落まで普通に笑いながら話している女性が、崩れ出した瞬間に悲鳴を上げていました。

その前から黒煙の出ているビルに目を向けていたのに、笑いながら飲んでいることに違和感があります。

が、それが実際にああいう事件が目の前で起きた時の、人間の反応なのでしょう。

「動物のような、映画のようなものに見えた」

と語られているのがリアル。

ビルの下で燃える様子を見ていた人々も、呆然としたり、突撃の様子を話したりしていたけれど、崩落し出した途端に冷静さを失って叫び声を上げていました。

日本語のニュースではNHKの映像があります。



初めて、今更ながらに、私は9.11のことに感情移入したのです。

今まで何度も日本のテレビでこの時の様子を観ていたはずなのに。

英語の勉強をして、彼らの話す内容がある程度聞き取れるようになって、初めてショックを受けるなんて…ずいぶんと私は感情と想像力が欠落した人間ですね。


前置きが長くなりましたが、こうして9.11の映像を観始め、他にもNetflixで当時のことを題材にした作品は無いのかな?と思って検索して出てきたのが、マイケル・ムーア監督の「華氏119」でした。


華氏119(字幕版)

元々は9.11を題材にした「華氏911」があり、それをもじってトランプ大統領とアメリカの政治腐敗を描いたのが「華氏119」です。


華氏 911 コレクターズ・エディション [DVD]

ちなみに「華氏911」の配信は見つかりませんでした。

現状ではTSUTAYAでDVDレンタルをするしか観る方法はありません。(配信は無し)



でも「華氏119」を再生してみたら、トランプ大統領がテーマなのでタイムリーだな~と思ってそのまま観続けました。

冒頭のトランプ大統領の等身大フィギュアを作る映像が、ライアン・マーフィーのNetflixドラマ「The Politician」と同じだとすぐに気付きました。

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友人が以前Netflixオリジナルの海外ドラマの何かが良い、と話していたのですが、もしかしてコレかな?と、トップ画面でオススメされたドラマ「The Politician(ザ・ポリティシャン)」を観てみました。ら…1話目の展開と、River Barkley(リバー・バークリー)を演じるDavid Corenswet(デヴィッド・コレンスウェット)がめっちゃカッコよくてハマり、一気に全8話観ちゃって寝不足…まぁ…リバーは1話で自殺しちゃうんですけど、でも...



多分オマージュであの映像にしていたのでしょうね。

「The Politician」は野心家の高校生がアメリカ大統領になる夢を叶えるべく、策略を巡らせて戦うコメディ・ドラマですし。

他の作品も色々観ていたら気付くことってたくさんあるんだなぁ、と思うと、今まで

「アメリカの映画やドラマなんて、ハリウッド大作とか全米が泣いたとか言う割に、ストーリーがショボい」

なんてイメージのままロクに観ていなかった人生の大半が悔やまれます…

「華氏119」は「ヒラリーが絶対に当選する、と言われていたのにトランプ大統領が登場する」という2016年の大統領選から始まりました。

私は当時全然このニュースは追っていなかったので、全く詳しくありません。

ここも私の過去の思い込み

「アメリカの大統領なんて、不倫したってスキャンダルで消えるレベル。

日本の天皇陛下と違って、総理大臣のように簡単に交代がきくパフォーマー」


という印象しか無かったんです。

先日の2020年アメリカ大統領選挙に関しては、英語の勉強のつもりで追っています。

新型コロナウイルスの感染拡大時には、トランプ大統領のスピーチもなるべく日本語で翻訳されない内にリアルタイムで観ていました。

私にはトランプ大統領の英語はモゴモゴしていて聞き取りづらいのですが…

最初はバイデン候補のことも全然知らなくて、「オバマ大統領のときの副知事」という情報しかなく、何が本当なのか、日本人がSNSで書いているのは単なる陰謀論なのか、CNNはフェイクニュースメディアなのか、判断がつきませんでした。

もちろん今も分かりません。

しかしアメリカ人であり、ドキュメンタリー映画監督として著名なマイケル・ムーア監督のこの作品には、日本人の私が知らなかったアメリカの状況が描かれていました。
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「初めての女性大統領が誕生するなんて、信じられない!」

泣きながら喜ぶ女性たち、ヒラリーを応援する大勢の支持者の当時のニュース映像がたくさん流れる間に、マイケル・ムーア監督は語ります。

「トランプが大統領になるなんて、誰も想像していなかった。

彼はただ単に、自分よりテレビ出演時のギャラが高い女性より高額になりたい、と思ってパフォーマンスで選挙に出ただけ。

支持者は1日50ドルで雇ったサクラたち。

でも演説で黒人差別発言をしまくってテレビ局から解雇されてしまった。

息子たちの勧めで2つの演説に行った時、大勢の支持者に囲まれることとなって初めて

「大統領選になるのは、悪くない選択じゃないか?俺は世界の王になるんだ、と思ったんだ」


と思った、とアテレコしていますが、これはあくまでもマイケル・ムーア監督の思い込みかもしれないし、真相は分かりません。

ただ切り貼りの映像でしたが、トランプ大統領は

「ずっと大統領を続けるために、2期目の選挙はしない。16年、いや一生大統領でいたい」

と笑いながら中国などで話していました。

そんなトランプ大統領とヒットラーの類似性を並べる演出もありましたが、これは思い込みもありそうだけど…

ただ、マイケル・ムーア監督はこの大統領選挙以前にトランプ氏と番組で対談をしています。

最初はマイケル・ムーア監督の口撃を嫌がってかトランプ氏は帰ろうとしますが、プロデューサーの説得で対談は成立。

トランプ氏はマイケル・ムーア監督の過去の作品を褒めていて、「私の映画は撮らないで欲しいけどね」と笑っていました。

そしてその後「マイケルとは晩御飯を食べたことがあるけど、いいヤツだったよ」と他で発言しているのですが、監督は

「私は彼とご飯を食べたことなんて無いのに、嘘をついた」

とバッサリ。

私はマイケル・ムーア監督をよく知らないのですが、彼がアメリカ内で一定の地位を気付いているドキュメンタリー監督だということを改めて認識しました。

何しろ、彼の他の映画のプロモーションには、後日トランプ大統領の娘婿になる人も駆けつけて絶賛していたのですから…。

この監督は、ガチで政治家と繋がってドキュメンタリー映画を撮れる人なんだ…

というのは、日本人としては本当に不思議な、ちょっと信じられない存在な気がします。


映画の前半はとにかくトランプ叩きに近いものでした。

特に娘のイヴァンカさんへの接し方は、切り取り方のせいとは言え気持ち悪い…

幼い頃から1番のパパっ子として甘える娘とキスをしまくり、腰に手を回し、

「10年後にはこの子とデートだ」
「娘じゃなきゃ付き合っていた」
「娘と私の好みの共通点はS○X」


なんてことをマスコミの前で話してたんですね…

大統領選前にはマスコミのカメラワークに指示を出し、ワザと30分演説開始を送らせて待たせてみたり、電話出演で調子に乗ってみたり、と自由奔放なトランプ氏。

演説会場からは「黒人を摘み出せ!ほらそこにもいるぞ!自国に帰って働け!アメリカから出て行け!」と黒人差別を助長。

周囲の白人も黒人の参加者に唾を吐き、殴り、会場から追い出していました。

こんな映像を観たら、彼が大統領になるなんて予想は出来ません。

そして映画の後半は、マイケル・ムーアの地元ミシガン州フリント市の水質汚染がテーマとなっていきます。

それまで美しい湖の水を引き入れていたのに、当時の州知事が金儲けの為に不要なパイプラインを作ることとし、その切り替え期間に汚染された川の水を住民に飲ませました。

鉛の入った茶色く濁った水に住民は困惑。

子供たちは湿疹や抜け毛など様々な障害が出始めているのに、州は

「規定値内の安全な水だ」

と言い張り続け、そして医師には

「規定値以上の鉛が検出されたことは伏せろ」

と指示していた、と医師が語ります。

この計画を決めた州知事を支援していたのが、トランプ氏。

この汚染された水は、地域の車製造工場でも使用され、部品が腐食することが発覚。

怒った州知事は「工場で使用する水だけ、キレイな湖の水を使う。住民には汚染された水を飲ませ続ける」と決めます。


ここでポイントなのが、住民たちはオバマ大統領が現地に来て状況を知ってくれたら、改善してくれるものと信じていたこと。

この時水質汚染は緊急事態宣言が出されていました。

オバマ大統領は住民の前で改善を約束し、パフォーマンスとしてこの地域の水を飲んでみせます。

「パフォーマンスじゃないよ。ミネラルウォーターじゃなくて、グラスに入った水を持ってきてくれ」

笑顔でそう言い、グラスを手渡されたオバマ大統領は、水を飲まずに唇だけ浸しました。

それを観て住民たちは絶望…

2回オバマ大統領はこのパフォーマンスをし、結局「浄水器を使えば飲める水だ」と結論を出します。

またオバマ大統領への批判はもう一つあり、それは住民への事前予告なしに町中でテロの訓練として廃墟ビルなどを攻撃した、というのが描かれていました。

番組冒頭でもマイケル・ムーア監督は語っています。

「本当のアメリカ国民ってなんだ?

アメリカ国民のほとんどが左寄りのリベラルだ。

なのに、ここ30年の大統領はほとんどが民主党だった。

50州の内民主党派なのは6州だけなのに」


そして議員たちが口にする「compromise(妥協)」

日本政府を叩いている人たちは、この映画の感想に「日本と同じだ」と語っていますが、私は全くレベルが違うと感じています。

福島の原発の問題は確かにいまだに解決されていません。

が、当時さかんに「これからは奇形児が生まれまくる」と騒がれたけれど、そんな事実は聞きませんよね。

「東京でも奇形児が生まれる」なんて言われていましたが、私の友人たちは震災以降健康な赤ちゃんを皆んな生んでいます。

障害のあるお子さんも生まれていると思いますが、私の身近にはいない、ということは、すべての赤ちゃんに被害が出てはいないんです。

新型コロナウイルスの被害も、アメリカと日本では桁が違いすぎます。

基本的に日本は小さな島国であって、貧富の差が激しい移民集団のアメリカとはベースが違う、のでは?


映画の最後、貧困化した州で教師たちが賃金の引き上げのためのストライキを起こし、そして荒れた子供が銃乱射事件を起こしたことを受け、子供たちが集団でデモ活動を始める様子が描かれていました。

教師は副業をしなければ暮らしていけない。

子供たちの親は貧困で子育てが満足に出来ない。

そもそも住民が銃を持てる社会はおかしい。


彼らの運動はFacebookを通してアメリカ中、世界中に広がり、代表者の子供は議員と直接話し、演説をし、デモ行進をしていました。

これに対して「日本人の若者も、こんな風に行動を起こせるようになると良い」と書き込んでいる感想を見かけました。

私は違うと思います。

教師や子供たちがこんな行動を起こさなくても良い社会になるべき、なんです。

これからの日本が、ああなる可能性はもちろんありますが…

汚染された水に絶望している女性の言葉が印象的でした。

「皆んな簡単に『なんで引っ越さないの?』と言うけど、じゃあこの家を誰が買ってくれるの?

家が売れなければお金がない、どこにも引っ越せないのに」


例えば日本でも、自由や自然を求めて地方に移住をし、合わないからと都会に戻ろうとしても、地方は低賃金のため貯金が尽きてしまっていて、もう移動するお金が残っていない

というケースはたまに周囲で見聞きすることがあります。

転勤族育ちの私としては、日本では移住は簡単なことに思えてしまうのですが、そう思えない人もいるんですよね。

マイケル・ムーア監督は地元を愛するが故に、汚染された水をトラックに詰めて知事の家の庭に撒くという行為も入れていました。

申し訳ないことに、このフリント市の水質汚染を私は全然知らなくて、こんなことが起こっているとは…と本当に驚くと共に、

「これをバイデン氏が解決することが出来るとも思えない…」

と感じました。

マイケル・ムーア監督はヒラリーを支持していましたし、今回もバイデン氏を支持しています。



でも期待を裏切られたら、それをまた映画とするかもしれませんね。

日本人の私は、アメリカのことは所詮他国のこと、と思っている部分がまだまだあります。

アメリカに行こうと思い、英語の勉強を始め、アメリカ人の推しが出来、Netflixなどで色々な映画やドラマを観たり、とする内に、アラフォーの今まで全然積極的にアメリカに関心を持っていなかったこと、むしろ憎んで馬鹿にしていたことに気付きました。

そうやって思考停止していたのは、私自身だけの責任とは思えないんです。

田舎で高校生まで過ごした私には、アメリカは遠く、はだしのゲンなど戦後の経験談は教科書や図書館の本やテレビで溢れていました。

そうやって、情報により感情をコントロールされていたのかもしれない…

そう思うと、韓国や中国と日本の関係だって、何が正しいか、誰が正しいのか分からない。

誰かの言葉を鵜呑みにして、それを漁ることを「勉強」と思って偏っていくのも怖い。

そういう意味では、マイケル・ムーア監督のこのドラマは、ある意味「私はこう思う」という視点を押し付けすぎずに構成していたと思います。

個人的にはトランプ大統領が今叫んでいる陰謀論を信じている方には、どう思うのか観ていただいて、感想を聞かせてもらいたい映画でした。

さて、次は「華氏911」を観たいと思います。
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