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中村倫也出演・映画「愚行録」ネタバレ感想~「普通の人」ほど平然と他人を傷付けている…

TSUTAYA TVのポイントを消費するために、中村倫也出演作であり、大好きな満島ひかりの出ている映画「愚行録」を観てみることにしました。


愚行録





ミステリーなので、ネタバレするこの記事を読むと「犯人は誰だ?」が分かってしまうので、以降読み進めるかはご検討ください。

あらすじ

1年前のエリートサラリーマン田向一家惨殺事件(夫婦と娘)を追う週刊誌記者の田中武志(妻夫木聡)のストーリーと、3歳の娘をネグレクトして逮捕されている田中の妹 光子(満島ひかり)のストーリーを交互に交えて展開されます。

一家を惨殺した犯人は誰だ?

光子の子供の父親は誰だ?


という謎を持ちながら進み、最後には2つの事件が一本の筋に繋がることにより

平然と笑いながら他人を傷付け、見下し、追い込むのは、多くの「普通の人」だ。

という気持ちにさせられるストーリーです。

物語なので、「そりゃ無いわ」という部分もありますが、リアルな部分もあり、人間不信になりそう。


映画の始まりは、田中武志が陰鬱な顔でバスの窓際席に座っているシーンから始まります。



窓の外を見ている田中の肩を叩き

「何ボーッとしてんの!席譲ってあげなさいよ!」

とお婆さんを指し示す中年男性。

のそりと立ち上がった田中武志は、足を引きずりながら歩き、車内で転倒。

正義感を振りかざしたこの中年男性は、気まずそうに顔を逸して見て見ぬふり。

「若者が座っている=悪者」と思い込み、相手に気付かれていない障害があるかもしれない、と考えない人あるあるですね。

但し、田中は足を引きずりながらバスを降り、そのバスが行ってしまったら普通に歩き始めます。

足が悪いフリをして、この中年男性の偽善を批難しただけだったのです。

これは賛否両論ありそうな行動ですが、足を引きずる田中から目を逸らす時点で、この中年男性には同情の余地はありませんね…


バスを降りて田中が向かったのは、勾留中の妹・光子との面会。



週刊誌記者の田中は仕事で出会った弁護士・橘美紗子(濱田マリ)に弁護を頼んでいます。

虚ろな笑顔を浮かべる光子は、3歳の娘にロクに食べ物も与えずにネグレクトをしていたことが発覚して逮捕されていて、娘は現在重体で入院中。

1歳程度の体重しか無い娘は、もし回復しても重度の障害が残るだろうと医師から診断されている状態です。

暗い表情で言葉少なに妹と面会する田中と、

「あの子、元々食が細いんだよ。」

と笑顔で話す光子。

面会後に橘は「光子も子供の頃に、娘と同じように虐待されていたんじゃないですか?」と田中に質問し、そうだと分かると「なら、精神鑑定をすれば刑を軽くできるかもしれない」と話しました。

田中兄弟は、16歳で兄を産んでまともに食事等与えない母と、暴力をふるい続ける父の元で育っていたのです。


週刊誌記者の田中は、乗り気じゃない上司を説得しながら、一年前に起こったエリートサラリーマン田向一家惨殺事件を追うことの許可を取ります。

妹が捕まったことでショックを受けている田中に、せめて好きなことをやらせてやろうと計らう上司。

そして田中は、夫の田向浩樹(小出恵介)の元同僚に会いに行き、

田向は結婚前、社内の飲み会で会った同僚女性とその日の内に関係を持ち、面倒になってこの元同僚とも関係を持たせ、最終的に二人して捨てた話を笑い話として聞きました。



女からすると胸くそ悪い男たちですが、この元同僚にとっては

「何であんな良い奴があんな目に遭ったんだ…」

と涙を流す程、田向は良い奴だと思われていたのです。

では、この捨てられた女性が犯人か?と言うと、この女性は翌年には他の男性を見つけ、既に結婚して子供もいるようでした。




田向夫妻はエスカレーター式で進学したお嬢様お坊ちゃまが多く通う大学出身でした。

妻の旧姓夏原友希恵(松本若菜)は美しく上品なお嬢様。

友希恵に彼氏を取られた現カフェオーナーの宮村淳子(臼田あさ美)は、彼女がいかにしたたかに自分に近づいたか、身分の低い同級生を笑顔で利用していたかを語りました。



「友希恵は私に敵対心を持っていた」

と淳子は思っていますが、淳子の元彼だった尾形孝之(中村倫也)は、外部生だった淳子の方が虚栄心が強く、友希恵に敵対心を持っていた、と語ります。





最終的には尾形は友希恵に乗り換え、淳子が友希恵を叩いて関係は終わりました。

尾形は話している最中煙草を吸っていて、話し終わった後、吸い殻は田中が持っていた携帯灰皿に仕舞いました。
光子は精神鑑定を受け、精神科医に幼少期のネグレクトと、父親から小学生の時から性的虐待を受けていたことを話し始めます。

徐々にエスカレートしていった父親に兄は気付いていましたが、殴られるのでずっと耐えていました。

しかし兄は高校生になり、ある日妹が今まで聞いたことがないような泣き声をあげているのに気付き、思わずドアを開けて妹のベッドの上にいる父親を殴りつけました。

翌日父親は家を出ていき、両親は離婚。

母親は「誘惑したオマエが悪い」と光子を責めたと言います。

「出ていった日のお父さん、なんだか小さくなっちゃってて、あれはちょっと可哀想だったな」

と笑いながら精神科医に話す光子。

これはもうね…胸糞なんですけど、実際にこういう事件ってありますね…

母の代わりに料理を作ってくれ、父から守ってくれた兄は、光子にとって特別な存在でした。

弁護士の橘は、「じゃあ、光子さんの娘の父親は実父だから、母子手帳も何も記載されていないんだ」と納得します。

田中も「妹は娘の父親の名前は、自分には言わない」と語りました。


田中は次に田向と学生時代に付き合っていた稲村恵美(市川由衣)に会いに行きます。



すでに小さな赤ちゃんの母親になっている恵美は、田向が就職活動のために社長令嬢の自分と、そして他の同級生女性とも関係を持っていたことを語りました。

それでも、そうやって野心的に活動する田向のことを憎めずにいる恵美。

田向は結局、コネを使った就職先ではなく、自分で選んだ住宅系の会社に就職をして卒業しました。

だから、自分と二股をかけていた女が犯人なのかも知れない、と彼女は語りました。

このように、田向夫妻は学生時代から、周囲の人間関係を自分に都合よく扱う部分がある人間だったのです。


光子は精神科医に子供時代からの話をしながら、両親の離婚後に憧れていた大学に通い始めたことを語りました。

そう、光子は田向夫妻の妻、友希恵の同級生だったのです。

大学デビューを楽しみに頑張っていた光子は、片親の庶民の自分はお嬢さんお坊ちゃん達に相手にされない現実を知ります。

しかし、美人だったので友希恵に気に入られ、パーティーや飲み会に誘われるようになりました。

このシーンと並列に、兄の田中を呼び出した宮村淳子(臼田あさ美)も、当時の光子と友希恵の関係を語り始めました。

光子はパーティーや飲み会でお坊ちゃまたちに目をつけられ、その都度誘われるがままに一晩関係を持ってしまうようになりました。

光子自身は無邪気な気持ちで男性に付いていっていたのに、男性たちは欲望の対象としか光子を見ない。

監獄で横たわる光子の体に、無数の手が嫌らしく這いずり回る幻想的な映像が差し込まれます。


淳子は田中に「男たちに光子を斡旋して手を引いていたのは友希恵だった。

まぁ光子も野心が強すぎたんでしょう。ああはなりなくないなって思いましたね。

結局4年生の頃には光子は誰にも相手にされなくなり、気付いたら学校で見かけなくなりました」

と語り、光子が田向一家の事件の犯人かも知れない、と軽く話しながら、田中のワインを注ぎ足すためにキッチンに向かいました。

薄く笑顔を浮かべながら、じっとその話を聞いていた田中は、おもむろに立ち上がって近くにあった置物を手に取り、淳子を何度も殴打して殺害しました。

そして、淳子の吸い殻のある灰皿の中に、元恋人だった尾形の吸い殻を入れました。

その後尾形は重要参考人として勾留されます。


場面が変わり、光子は精神鑑定の部屋で誰かに向かって、娘の話をします。

私、子供が欲しかったの。

好きな人と結婚して、その人の子供を産んで、幸せに暮らす。

そんなこと、誰だって叶えてるじゃない?


でも…あの子笑わないの。抱きしめようと思っても、出来ないの。

そんな時にね、偶然夏原さん(友希恵)に会ったの。

憧れの女性だった夏原さん」

キレイな洋服を着て、可愛い娘と幸せそうに話しながら歩く友希恵は、光子をチラリと見てから目を逸らし、そのまま歩き去ってしまいました。

思わずその後を着ける光子。

友希恵は自宅で娘と一緒に夫の田向を出迎え、楽しそうに高級そうな自宅に入っていきました。


「あの時、それまで頑張って幸せになりたい、手に入れたいって思っていたものは、無理なんだって気付いたの。

プツンって張り詰めていたものが切れた。プツンって音がしたの。」


そう語る満島ひかりの演技は、怪演としか言えません。とにかく恐ろしく、美しい。

光子は呼び鈴を鳴らそうとしたけれど、お勝手に向かったらドアが開いていて、そこから自宅へ侵入。

キッチンにあった包丁を掴み、まず夫の田向を刺します。

「夏原さんが選んだだけあって、旦那さんはカッコよくて、いかにも頭が良さそうって感じだった。

包丁も、夏原さんが使ってるだけあって、切れ味が良かったなぁ。

ちゃんと刺したでしょ?5回、6回、7回…

肋骨に当たった後に心臓に刺さった時は、いっぱい血が出てビックリしたよね」

とケラケラと笑う光子。


そう、田向一家惨殺事件の犯人は光子だったのです。

その後光子は友希恵とその娘を刺し、シャワーを浴びて血を洗い流してから自宅へ帰っていました。

そう話し終わったところに精神科医がドアを開けて入ってきます。

光子の独白は独り言で、誰も聞いてはいなかったのです。

そして精神科医は、光子の娘が亡くなったことを伝えました。

弁護士の橘は田中兄妹の母親に会いに行きます。

すでに再婚して子供のいる母親は、迷惑そうにしながらも、出産前に自分の元に来た光子が

「誰にも知られずに子供を産める場所を教えて欲しい。

どんなことになっても、とにかく、この子が健康に生まれてきてくれればそれで良い」

と語っていたと話します。

「実父から無理矢理されて出来た子供でも、健康に生まれてきて欲しいと思えるものなんでしょうか…?」

と話す橘に、母親は驚いた顔で

「違いますよ、父親は。そう…聞かされていないんですね…」

と言います。


娘が亡くなったことを知った光子の元に、また田中が面会に来ました。

「私、あの子に手を上げたことは一度も無かったよ。

お兄ちゃんがお父さんに殴られてるのを見てたから、それだけだけはしちゃダメだって思ってた。

お兄ちゃん、お兄ちゃんだけだよ、私の味方でいてくれるのは。大好きだよ。

だから…ごめんね」

と話しながら、そっとガラス越しに手を伸ばす光子。

…そう、光子が産んだ子供の父親は、実の兄の田中だったのです。

親から愛されず、世間から冷たい仕打ちを受けた妹を唯一受け入れてくれたのは、兄だったのでした。

終わり。


いやー、兄妹愛ものは割と好きな方ですが、これはちょっと…

兄が妹を馬鹿にした淳子を殺害したところとかは、結構グッと来たんですけど…

そもそも田中はちゃんと働いてるんだから、だったら光子と一緒に暮らして、二人で育てるって選択肢は無かったの?

光子は兄に内緒で一人で産んで、そのままネグレクトが発覚するまで姿を隠していたのでしょうか。

でも、ならどうして光子は姿を隠したの?

育てられない子を施設に預けなかったのは、何故?

光子にとっては大好きな兄と自分の子供より、兄のことだけが大好きだったのに。


結局の所、田中兄妹は二人共犯罪者です。(兄の犯罪は映画内では発覚していませんが)

二人をそうさせたのは、実の両親たちと、一般人で一見普通の顔をした冷酷な他人。

田向夫妻は、まーでもここまで酷い性格の男女はそうそういなそうですけどね。

あとこの夫婦の出会いは分かりませんでした。

あと、そんなにお金のない暮らしをしていた割には、よく光子はこんなお嬢さんたちの通う大学に行けたなぁ。

そりゃまぁ勉強頑張って慶応入った、くらいな感じの設定なのでしょうが、それでもよく学費が払えたね?

バイトしている風でもなく友希恵の誘いに乗って飲み会に出てたけど、そのお金はどこから出てきたの?

バイトして暮らしてたなら、あんな簡単にしょっちゅうサセ子してられないと思うけど…


でも狭い世界の中で、他人を信じては傷付いて、兄だけを頼った光子の気持ちは分からなくありません。

が、妹がこんな状況になっていることを、兄は気付いていなかったの?

一体いつ、兄妹は関係を持ったの?

それは一度きりなのか、何度も妊娠するまであったのか…

そう言えば勾留中の光子は、面会に来た兄に「久しぶり、半年ぶり?」と言いました。

ってことは出産後、二人は会っていた。

兄は自分の子供を産んだのかも知れない妹から、目を背けていたのでしょうか。

物語としては、私はこういう兄妹の話は好きな方です。

自分も兄がいるから、実生活ではありえないな~と思うけど、物語としてはアリだと思ってます。美形同士ならね!


妹を侮辱した淳子を殴る田中には、ちょっとジーンとしました。

そもそも私、映画「悪人」も好きだったので、こういう人間関係を描きながらも、家族愛が描かれるのに弱いのです。

柄本明が奔放で嫌な女だった娘(満島ひかり)を大事に思っていて、殺された娘を思って泣きじゃくるシーンに号泣しましたから。



この映画、イマイチ評判悪いんですけど、柄本明と満島ひかりと樹木希林の演技は最高ですよ!

ストーリーの全体像は胸糞なんですけど。

あ、「愚行録」の中村倫也は、良い感じにチャラかったです。

そして満島ひかりのこういう怪演は、本当に素晴らしい。

のでネタバレ分かってても全然引き込まれるお話ですし、むしろ謎解きしない分演技に集中できるはず。

あまりこの映画も評判よくないみたいですが、私はおすすめ!です。
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