都内在住40代独身女性ならではの、オタ活&仕事のストレス&アンチエイジングのことなど

Netflix #DAHMER ダーマー ネタバレ感想〜ライアン・マーフィーのシリアル・キラーと人種&障害者差別ドラマ

オタクの中には一定数シリアル・キラーもの好きがいますね。

私も10代の頃から、ビリー・ミリガンとかFBI心理捜査官ものとか読んだし、平野夢明の「異常快楽殺人」も読んでいました。


異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)

こういうホラーとかグロいものを若者に見せるのは良くない説がありますが、私は

「一定数の人間には悪影響を与える可能性もあるかもしれないけれど、多くは『反面教師にする』『想像力を持たせ、警戒心を育てる』という効果を与える側面もある」

と思っています。

私の周囲は一定数こういうの好きな人いましたが、そういう事件を起こした人はいませんし。

シリアル・キラーのアート作品展も行ったことあったな〜。

やっぱり混雑!シリアルキラー展に行ってきました

田島昭宇の原画展にシリアルキラー展に、と、グロ系を巡ってしまいましたが、やはりゲイシーの絵とか観てみたかったので、混雑していると評判のシリアルキラー展に行ってきました!場所は銀座。資生堂パーラーから割と近い場所でした。このビルの地下2階にあるヴァニラ画廊。階段を降りると、確かに前に行列が。というのも、画廊がとても狭いのに展示数が多いので、どんどん入場するわけにもいかないのです。10分くらい並んでから...



ということでNetflixでもその手の犯罪物ドキュメンタリーとかドラマを色々観てきていましたが、今一番話題なのは先日公開になったばかりのライアン・マーフィーが手掛けたドラマ「DAHMER(ダーマー)」!



こちら、ドキュメンタリーではなくあくまでドラマとなっています。

もちろんグロい、怖い部分もたくさんあるので、皆さんにオススメとは言えません。

が、犯人であるジェフリー・ダーマーの幼少期から事件発生、解決、絶命…だけを描いたドラマではなく、「人種差別(ブラックとブラウン)」「加害者の両親」「被害者家族達の心情」「ダーマーの隣人のトラウマ」「家族愛」「宗教で人は救われるのか?」等などが盛り込まれていて、前半と後半ではかなり視聴者に訴えるものが変わっていました。

史実通りの部分と、フィクションでまとめ上げている部分があるんだろうと思います。

ちなみに、子育て中で旦那や子供にイライラしてしまいがちな奥様は、観ない方が良いかも…

観ることで子供への接し方を考えるキッカケになるかもしれませんが、それにしては題材が重すぎます。

そして…ダーマーの父親が本を出しているから、というのもあるのでしょうが、母親の存在感が無…というか、結構酷いんですよ。


息子ジェフリー・ダーマーとの日々

若くして結婚し、情緒不安定な妻を置いて仕事に没頭する夫。

ヒステリックな母親は頻繁に旦那と喧嘩をし、離婚が決まった時は親権を取ったにも関わらず、「ダーマーは18歳で成人だから」と自宅に放置して出ていってしまいました。

その前に父親も出ていっていて、別の女性と再婚。

子供の頃に父親と魚釣りをして捌いたり、動物の死体で剥製を作ったり…ということをしていたダーマーは、自身の性的嗜好が同性に向いていることと、内蔵や血液に興奮することに気付いていってしまいます…

で、一人残された家で暮らしながら、最初の犯行を始めてしまいました。

その後、父親はてっきり前妻は子どもたちと暮らしていると思い込み、新しい素敵な奥さんを見せつけてやるぜ〜ってくらいの気持ちで家に来て、ダーマーが一人で荒れ果てた生活をしていることを知り愕然。

とにかく進学をさせようとしますが、すぐに大学から呼び出しをされ、退学を言い渡されてしまいました。

理由は、ダーマーがアルコールに依存しまくっていて、ロクに授業も出ていないし成績も悪かったからです。

ダーマーは高校時代から、IQは高いのに集中力が無くて成績が良くなかったんですね。

その後、軍隊に入って最初は上手くいっていたダーマーは、やっぱりアルコールに溺れて除隊となってしまいます。

見かねた父親は、自分の母であるダーマーの祖母の家で同居させることにしました。

この家の地下で、ダーマーは次々と犯行を重ねていきます…

お祖母さんも悪臭とか孫の行動に異常さを感じていたし、父親も時々訪ねては変だと思っていたけど、ダーマーが嘘をついて徹底的に隠していました。

男のマネキン人形を盗んできてベッドに寝かせているのに気付いた時も、祖母は怒って捨ててしまい、そして教会に連れ出そうと何度も言います。

これは日本人にはわからない感覚ですが、教会に行くことで神様に許される、幸せな精神状態になれると信じている世界線、なのかな。
ダーマーは基本的に無表情で、何を考えているのか分からない男として演じられていました。

穏やかで、従順そうに見えて、カッとなると怒鳴り散らす。

そのギャップが怖いんです…が、それ故に「両親に捨てられて寂しいのかな…」という母性を感じそうになります。

それをまた裏切るように、残虐なことをしまくる!

一番切なかったのは、乳児の時に病気になって処方された薬の副作用で聴覚を失ったトニーとの交流でした。

トニーは聾唖者であることに卑屈にならず、家族と仲が良く、優しくて前向きなモデルを目指している青年。

ゲイバーでダーマーと出会っても「僕が探しているのは本気の相手」と言い、すぐには全てを許しません。

いつもならすぐに「1杯奢るよ」と言ってグラスに薬を入れて連れ込み、罪を重ねてしまうダーマーでしたが、トニーに対しては薬を飲ませようとしかけては止めています。

ダーマーがカッとなった時にも、トニーは優しく彼を包み込み、安心感を与えてくれる存在になるはずでした。

なのに…なのに、仕事で帰るトニーにダーマーは苛立ち「次いつ会えるんだ!?」と、ハンマーを振り下ろしてしまいます…

ダーマーが欲しかったのは「ずっと側にいてくれる理想のゾンビ」だから…

当時ダーマーが住んでいたのは黒人の多い街で、被害者もほぼ黒人かヒスパニック系かネイティブ・アメリカンのルーツを持つ有色人種。

なので隣人の黒人女性がダーマーの部屋の異臭、聞こえてくる悲鳴、逃げていく少年を見たら警察を呼ぶなど、何度も何度も行動を起こしているのに、警察は見逃しまくりました。

そういう部分に斬り込むシーンがいくつかあります。

ダーマーから逃げた黒人男性が

「前科のある白人の言うことは信じて、前科の無い黒人の言うことは信じないのか」

と警察に言うシーン。

黒人の警察官もダーマーに「被害者が有色人種なのは、狙いやすかったからなのか!?」と差別的な意図があったのか糾弾しようとするのですが、それに対してはダーマーはキョトンとしていました。

だからドラマの中では、ダーマーがただただ狙いやすいからと有色人種に近付いたのか、白人でも黒人でも何でも好みの男性なら良かったのか、は分かりません。

当時と今ではどのくらいアメリカでの対応が違うか分かりませんが、今以上に酷い差があっただろうとは思います。

ただその場合は、ダーマーに差別意識があるなら黒人を狙わなかった可能性もある。

ドラマの最後にはジョン・ゲイシーとの比較も出てきますが、ジョン・ゲイシーは美形の白人少年を狙ってますからね。

プライドの高い地位や名誉が大好きなゲイシーであれば、ゲイバーで黒人男性を漁るなんてしないという差があるんでしょうか。

基本的にライアン・マーフィーの作品では、黒人の家族はとてもとても仲が良くて、皆んな優しい行動力のある人が多いなと思います。

それをポリコレと一括にするのは、違うでしょう。

肌の色が何色だろうと、仲が良い家族は良いし、悪い家族は悪い。

それでも、アジア系の被害者少年の家族が、事件後に「自国に帰れ!」と何度もイタズラ電話などで人種差別に遭うシーンは、悲しかった…

被害者も、隣人でトラウマが残っている女性も、ずっとずっとダーマーのことで傷付いているのに、世間はそれをフォローするどころか追い込もうとしていく…


その状況の中で、ダーマーの父親は息子に会いに行き、「自分のせいで息子はこうなってしまったのか」と後悔をし、その理由を考えながら自叙伝を書いていきます。

これ、ドラマ内では本人は「金儲けのためじゃない」と言っているけど、書くこと自体を楽しんでいたり、書評の評判が良くて喜んだり、映画化の話が来て浮かれたり、それがポシャったら落ち込んだりしているため、「あれ?やっぱり勝手なお父さん?」と思わされたりもしました。

でも、そういう状況もダーマーに面会して伝えたり、「愛しているよ」とハグをしたり、すごくちゃんと息子と向き合おうともするんです。

一方、実母はこの状況に耐えられなくなり、裁判前に遺族に「息子は精神異常者ってことにしてくれないか」と死刑を免れるよう頼みに行ったり、ガス自殺を図ろうとしたりする…

うーん…お母さんに関する記録があまりないのかもしれませんし、元々精神的に脆い部分のある母親に「普通、加害者の親ならこうすべき」を押し付けるのもおかしい気がしますが、それにしても…なんですよね。

そう思ってしまうこと自体も、私の中に先入観があるからかもしれません。

皆んなそれぞれ、良いところもあれば悪いところもある。

その良いと悪いの境目って誰が決めるの?神様?


ダーマーの隣人だった女性もトラウマに苦しみ、教会で「ダーマーが憎くて堪らない自分が嫌だ」と神父さんに泣きつきます。

ダーマーは、ジョン・ゲイシーが自身の罪を認めず、死刑になっても天国に行けると信じていると知り、「罪を認めていて、死刑を望んでいる自分とジョン・ゲイシー。神様はこの違いをどう判断するんだろう?」と神父さんに質問します。

そしてジョン・ゲイシーが死刑執行の日は皆既月食。

同日にダーマーは洗礼を受けました。

それまで神様を信じていなかったダーマーですが、神父から「神を信じている、というだけで良い」というような話を聞き、心に安らぎを覚えるんです。

そんなダーマーの命を絶ったのは、黒人の囚人。

元々はダーマーが何故ファンレターが大量に届いたり、刑務所内で自由に行動出来たり、お金を持っていたり、と特別扱いなのか分からずに不満を溜めていた彼は、ダーマーが逮捕された理由を調べます。

そしてまだ14歳の少年を含む、有色人種を狙い続けたダーマーのことを許せず、「自分は神から頼まれてやっているんだ」と自己正当化してトレーニング機器を使って殴打し続けました。

病院に駆けつけた父は、酷い状態の息子に触れようとして、でも血塗れで躊躇い、でも…と葛藤しながら

「産まれたときからずっと、お前このことを愛していたよ」

と言っていました。

その後脳を研究対象として使うかどうか、で元妻と揉め、大反対をして父は「息子の希望通りに全て焼いてくれ」と言います。

元妻は腫瘍など脳に異常があったせいか知りたがってたのですが、父親に関しては宗教上の理由で断った説もあるようですね。

ザザッとまとめるとこんな内容なのですが、このドラマの良いところは

絶対にこれが正しい、こうなはずだ、こういう時はこうすれば良い、という一般論で片付けない

こういう一貫した姿勢でした。

優しい人だって、怒る。

残虐な人だって、優しい気持ちも持っている。

だから複雑で難しい。


こういうまとめ方をしたのは、今の時代に合わせているなと思います。

個人的には…ダーマーの母親ヤバいなと思っちゃうんですけどね…

でもダーマー自身が「自分の家庭環境と、自身のやったことや性癖は無関係だ。親には隠していたんだから、彼らが気付かなかったのは当然だ」という、あくまでも悪いのは自分だというスタンスでいて、うん、そりゃそうだよね、と思いました。

ワイドショーを観た人が、簡単に家庭環境のせいにして、犯人の親とか学校とか周囲を責めるのって、よくありますもんね。

そんなに単純に、全部が全部同じ条件で起こるわけじゃないんだろうなぁ。

ありえないくらい残酷な実話ベースの話ですが、精神異常者というわけではなく、あくまでも彼の性癖であった、という「自己責任」としないと、遺族も皆んな憎しみの持っていき場所が延々と続いていってしまう気がするんです。

そんな人でも神様は許すのか、私には分かりません。

全10話なので観やすいボリュームですし、最後は大団円でテキトーになることもあるライアン・マーフィーなのに、これはキチンときれいにまとまっているなと思いました。

年齢制限があるのでアレですが、大人の方で興味がある方は、ぜひぜひ。
関連記事